【医院向け】歯科衛生士への退職金は出すべき?目的や用意の仕方を解説

2023.05.15

歯科衛生士への退職金はいくらが相場か知っていますか。ここでは、歯科衛生士への退職金の相場はどの程度か、どのような条件で支給されているかなどを具体的な数字を打ち出して説明しています。また、退職金を用意する際にどのような方法があるのかなども解説していますので、歯科衛生士の退職金についてお悩みの方、ぜひ最後までご覧ください。

歯科衛生士の退職金を出している医院の割合は?

一般的に退職金は、退職した労働者に対して支払われる金銭のことを言います。他に退職手当や退職慰労金などと呼ばれることもありますが、内容は同じです。

歯科衛生士の退職金は、勤務先が保証するものですが、令和元年度に歯科衛生士会が発表した報告書によると、約46.5%の歯科医院が退職金があると答えています

退職金制度がないと答えた医院は39.2%、わからないという回答は12.8%でした。

参照:歯科衛生士の勤務実態調査 報告書

退職金支給は義務ではない

実は退職金支給は義務ではありません。退職金制度が法律で定められている公務員とは異なり、民間の歯科医院が退職金を支払わない場合でも法律違反になりません

就業規則に「退職時に退職金を支給する」という内容が定められていない場合は、医院側は退職金支給を行う必要はないのです。

雇用形態によっても異なる

先述した報告書によると「退職金がある」と答えた方の内、74.7%が常勤の歯科衛生士でした。

非常勤の歯科衛生士で退職金がある、と答えたのは8.3%と少数で、他8割以上の方が退職金をもらっていない、もしくはもらえないと認識しているという結果です。

そのため、退職金がもらえるのは常勤であることが条件として見えてきます。

非常勤やパート、派遣社員などの非正規雇用の場合は退職金がもらえる可能性は低いです。

歯科衛生士の退職金を出す条件は?

では具体的に歯科衛生士の退職金を出す条件はあるのでしょうか。退職金の支給に伴い、多くの医院が就業規定にあげているのが、勤続年数が3年以上で退職金を出す、というものです。

この場合の勤続年数とは、同医院に継続して勤めた年数のことを言い、歯科衛生士としての勤続年数とは異なります。

また、一般企業でも5年以上の勤続年数により退職金が支払われる場合が多いため、5年を目途にしておくのもいいでしょう

開業してまもない医院や業績が振るわない場合などは、このようなケースに当てはまらない場合もありますので、退職金を出そうか迷う場合は自医院の状況によって判断しましょう

歯科衛生士への退職金の相場は?

次に歯科衛生士へ出す退職金の相場について見ていきましょう。退職金制度には法律上、制度導入の義務はありません。自医院に退職金制度がない場合、もしくは就業規則等に明確な記載がない場合は、退職金を支払う義務はないのです。

そのため、退職金制度は会社によって異なります。また、個々の勤続年数や年収の水準など、働き方によっても違うのです。他にも、退職理由が自己都合か医院の都合かによっても金額は異なります。

医院によって異なる

歯科衛生士の退職金の相場は、1〜4カ月分とも言われています。そのため、医院で取り決めている月収によっても、退職金の金額が変わってきます。

歯科衛生士の勤め先は、診療所、病院・大学院、介護保険施設、行政などさまざまです。

一般的に診療所に勤める歯科衛生士に出す退職金の相場としては、

  • 月給(手当含む)×1~4カ月分
  • 退職時の基本給×勤続年数

と考えておいていいでしょう。

病院や大学病院の歯科衛生士は、一般企業に勤める会社員の退職金の相場と同じ、

  • 基本給×勤続年数×0.6~0.7

の相場で退職金が支払われることも多いようです。

中小企業の退職金の相場

ここでは中小企業の退職金の相場を見ていきます。

中小企業の退職金は、勤務年数の他にも産業や会社規模、勤務年数、最終学歴によっても異なりますが、今回は勤務年数と最終学歴によって金額の差異を確認していきましょう。

東京都産業労働局が発表している中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)の医療・福祉分野のモデル退職金を参考に表を作成しています。

  • 会社都合の場合
勤続年数大学卒短大・高専卒高校卒
20年1,658,000円1,530,000円1,438,000円
15年1,072,000円987,000円868,000円
10年725,000円666,000円570,000円
5年290,000円262,000円214,000円
  • 自己都合の場合
勤続年数大学卒短大・高専卒高校卒
20年1,514,000円1,349,000円1,319,000円
15年985,000円867,000円797,000円
10年651,000円585,000円517,000円
5年263,000円246,000円199,000円

参照:中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)

退職金にかかる税金

退職金は、そのまま額面の金額を歯科衛生士に渡せる訳ではありません。退職金には、所得税や住民税といった税金がかかります

ただし、金額によっては退職所得控除の対象となる場合もあり、その場合は税金がかかりません。対象外の場合は、税法上退職所得と呼ばれる特別な計算式を使って計算された税金が差し引かれます。

計算式は下記の通りです。

  • (源泉徴収前の収入金額-退職所得控除額)×1/2=課税対象になる退職金の金額

退職金にかかる税金は出す金額が大きいほど高額です。

しかし退職金には税金の負担が軽くなるように「退職金控除」という制度が設けられています。退職金控除を受けるためには、所得税法に定められた「退職所得申告書」を提出してもらわなければなりません。

この退職所得申告書を会社が受理し、手続きを行うことによって退職金控除を受けられますので、行うように案内してあげると親切でしょう。

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業績悪化で歯科衛生士に退職金がだせなくなったら?

就業規則で退職金の規定があっても、業績が悪化し退職金がだせなくなってしまうことはあるのでしょうか。ここでは、業績が悪くなった場合の退職金の取り扱いについて、2つのポイントに絞って解説します。

退職金の減額・廃止は原則従業員全員の了承がいる

今までは退職金をだしていたけど、業績が悪化しているからこのまま退職金をだすのは難しい、という局面を迎えた場合、経営者側としては退職金制度の変更を考えるでしょう。

しかし従業員は今まで通り、退職金を満額受け取るつもりで働いており、急な退職金制度の変更は認められるものではありません。この場合、退職金の減額や廃止などのルール変更は不可能ではないものの、原則として従業員全員の了承を得なければなりません。

従業員全員の了承を得られない場合、経営者と労働者、どちらも言い分ももっともであるため、就業規則(退職金規程)の不利益変更の問題として、裁判になることもあります。

例外的に退職金の減額が認められることもある

また、労働者全員の了承が得られない場合でも、両者にとって妥当な範囲での変更なら、例外的に認められる場合もあります。どのような範囲が妥当なのか、という点に関しては、裁判所の判断になりますが、一方的な就業規則の不利益変更は認められないため、変更内容は限定的なものに留まります。

ただし、突然の退職金制度の廃止などは認められることはないでしょう。支給額を減額するにしても、制度の導入に一定の猶予期間を設けたり、手当などの補充措置を行ったりなど経営者側は配慮が必要です。

歯科衛生士への退職金はどうやって用意する?

退職金はまとまった金額が必要ですので、計画的に用意しておく必要があります。

支給方法は、国の共済制度を利用したり、医院から一時金の支払いを行ったりとさまざまです。

ここでは歯科衛生士への退職金を用意する手段を3つ紹介します。

  1. 中小企業退職金共済に加入しておく
  2. 養老保険を利用する
  3. 余剰金から支払う

それぞれ詳しく解説していますのでご覧ください。

中小企業退職金共済に加入しておく

中小企業退職金共済制度とは、独力では退職金制度を設けることが難しい中小企業のために設けられた制度です

中小企業が毎月掛金を支払って従業員の退職金を積み立て、積み立てた金額は、従業員が退職した際に中小企業退職金共済から支払われます。

掛け金の一部を国が助成してくれる、中小企業退職金共済と提携しているレジャー施設や宿泊施設の割引などの福利厚生サービスを従業員に提供できる、などのメリットがあります。

養老保険を利用する

養老保険とは、保険期間をあらかじめ設定し、決められた金額を積み立てていく生命保険の一種です

被保険者が設定した保険期間の間に亡くなった場合、死亡保険金受取人に死亡保険金が支払われます。

また、積み立てが完了する満期には、満期保険金受取人に保険金の支払いが行われ、どちらの場合も同じ金額を受け取ることも可能です。

法人向けの養老保険では、福利厚生の付いたプランがもっともメジャーであり、税負担が減る、中途解約でも返戻金が受け取れるなどのメリットがあります。

余剰金から支払う

余剰金とは、はじめに定めた金額に対して余っているお金のことです。経営がうまくいっているのなら、売上の余剰金を従業員の退職金として用意しておくことで計画的に退職金の支払いを行えます。

しかし、余剰金を銀行に積み立てておく場合、3つのリスクがあります。

  1. 毎年上がった利益の中から貯蓄を行うため、法人税がかかる
  2. 他の資金との区別をつけにくく取り崩してしまう恐れがある
  3. 退職金支払い時に赤字を出してしまうリスクがある

そのため、余剰金は共済や保険を利用して、確実に準備しておけるようにすると良いです。

中小企業退職金共済や養老保険の他にも、さまざまな共済や保険がありますので、適切な手段を選びましょう。

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まとめ

歯科衛生士への退職金について、目的や用意の仕方などを解説しました。

退職金制度は、すべての医院で用意しなければならないものではありませんが、歯科衛生士の採用の際に大きなアピールポイントになる要素でもあります。また働いている歯科衛生士にとってはモチベーションにもつながる大切な問題です。明確な退職金ルールを設定し、安心して働ける職場を整えましょう。

歯科衛生士の退職金に関して分からないことがあれば、デンタルHR総研にご相談ください。採用に関する確かな経験とノウハウを用いて、貴医院のお悩みを解決いたします。

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