歯科衛生士の時給はいくらが妥当?時給を決める方法と注意点

2023.07.27
歯科衛生士のイメージ

歯科医師の診療の補助をはじめ、患者さんの口腔を含めた体の健康を支援する歯科衛生士は、歯科医院にとって欠かすことができない存在です。

そのため、優秀な歯科衛生士を確保したいと考える歯科医師は多くいますが、時給はいくらくらいが妥当かと悩んでいるのではないでしょうか。

この記事では、歯科衛生士の平均的な時給や時給を決める方法と注意点などを解説します。

歯科衛生士の時給はいくら?

公益社団法人日本歯科衛生士会が発表した令和2年の調査によると、常勤の時給は1,100円〜1,300円未満が27.3%と約3割を占めています。

次いで1,300円〜1,500円未満が19.3%、1,500円〜1,700円未満が18.2%、900円〜1,100円未満は12.5%、1,700円〜1,900円未満が9.1%となっています。

一方、非常勤の時給も1,100円〜1,300円未満が27.7%となっており、常勤同様に約3割を占めています。

また、1,300円〜1,500円未満が26.4%、1,500円〜1,700円未満が18.8%、900円〜1,100円未満が14.7%であり、常勤と比べると少し割合が大きくなっていることが分かるでしょう。

常勤と非常勤は双方ともに、平均すると1,300円前後が妥当な時給といえます

下記では、各勤務先における時給について解説します。

診療所

診療所の時給は、1,300円〜1,500円未満が28.3%、次いで1,100円〜1,300円未満が27.5%となっています。

そのほかには、1,500円〜1,700円未満が19.3%、900円〜1,100円未満が12.5%、1,700円〜1,900円未満が6.4%となっています。

上述した平均時給と比較すると、診療所のほうが高くなっていることが分かるのではないでしょうか。

病院・大学病院

病院・大学病院の時給は、1,100円~1,300円未満と1,300円~1,500円未満が同列で25.8%となっています。次いで1,500円~1,700円未満が19.4%、900円~1,100円未満が17.4%、1,700円~1,900円未満が6.5%と続きます。

1,100円~1,500円の割合が5割を占め、それより高い1,500円~1,700円が2割と、比較的高い水準で給与が支払われていることが分かるでしょう。

障害者歯科診療所等

障碍者歯科診療所等は、まず1,300円~1,500円未満が30.8%と全体の3割を超えている結果となりました。続いて1,500円~1,700円未満が23.1%、1,100円~1,300円未満が19.2%、 1,700円~1,900円未満が11.5%、1,900円~2,100円未満が7.7%と、全体を通して高めの水準であることが分かります。

障害者歯科診療は、なんらかの事情で安全に歯科診療を受けることができない人を対象に行われる診療です。安全に歯科治療を受けられる人よりも、特別な配慮が必要になってきます。歯科を提供する医療従事者は、特別な勉強をしたり経験を積んだりする必要があり、必然的に給与が高めに設定されるのです。

行政

行政は、まず1,100円~1,300円未満が31.2%、次いで900円~1,100円未満と1,300円~1,500円未満が同列で21.5%という結果になっています。全体的に見て、高い方ではないでしょう。しかし1,500円~1,700円未満も15.8%あり、行政によって支払われる金額に大きな差があることが分かります

歯科衛生士教育養成機関

歯科衛生士教育養成機関の時給は、まず26.3%が2,100円以上となっています。次いで1,300円~1,500円未満が21.1%です。1,500円~1,700円未満と1,900円~2,100円未満も、同列で13.2%という結果となりました。特筆すべきは、もっとも多い割合が2,100円以上であることでしょう。調査結果全体を見ても、歯科衛生士教育養成機関の時給は高いことが分かります。

歯科衛生士教育機関で働く歯科衛生士には、未来の歯科衛生士を育成する責務があります。仕事の責任の大きさだけでなく、事務処理など業務の範囲の広さも、給与の高さに現れているといえるでしょう。

介護保険施設等

介護保険施設等の時給は、1,100円~1,300円未満が29.9%と、全体の3割を占めています。次いで1,300円~1,500円未満が22.1%、900円~1,100円未満が18.2%と続きます。ここまでで分かるように、介護保険施設等の時給は、全体的に見て低めでしょう。

介護保険施設で暮らす人々は、義歯であったり、嚥下能力に不安があったりと、歯科に関する悩み事を持つ人も少なくありません。また、誤嚥が命に関わる病気につながることもあります。介護保険施設で働く歯科衛生士は、虫歯予防措置だけでなく、歯科に関わる多方面の指導をする必要があるのです。

企業・事業所(歯科診療業務)

企業・事業所での歯科診療業務の時給は、1,100円~1,300円未満と、1,300円~1,500円未満が同列で25.0%となっています。次いで、1,500円~1,700円未満と、1,700円~1,900円未満も同列で16.7%でした。1,100円~1,500円の割合が5割と、全体を通して平均的な時給の値となっています。また、1,500円~1,900円未満の値も3割を超えており、働く場所によっては平均的でありながらも決して低くない時給であることが分かります

企業・事業所(商品開発・営業等)

企業・事業所で商品開発や営業等で働く時給は、調査では2,100円以上が100%となっています。このような結果となった背景として、企業で働く歯科衛生士は、非常に数が少ないことが理由として挙げられます。また、商品開発や営業として働く歯科衛生士は、歯科の知識だけなく、事務処理やコミュニケーション能力など幅広い能力が必要となるでしょう。そのため、2,100円以上という高い時給が100%という結果となっていると推察されます。

歯科健診・保健活動機関

歯科検診・保健活動期間で働く歯科衛生士の時給は、900円~1,100円未満が最も多い30.3%、次いで1,100円~1,300円未満が24.2%と、900円~1,300円未満で全体の半分を占めている結果となっています。一方で1,300円〜1,500円未満と、1,500円〜1,700円未満が同列の18.2%となっており、働く場所によって時給が大きく変わることが見て取れます。

社会福祉施設

社会福祉施設の時給も、900円~1,100円未満が33.34%と、比較的安い時給が3割以上を占めている結果となっています。しかし、1,100円~1,300円未満、1,300円~1,500円未満、1,500円~1,700円未満がそれぞれ同列の20%となっており、こちらも働く場所によって時給が大きく変わることが分かりました。

地域包括支援センター等

地域包括支援センターで働く歯科衛生士の給料は、1,300円~1,500円未満が42.1%と最も多くなっていました。次いで、1,100円~1,300円未満が26.3%、1,500円~1,700円未満が18.4%と続きます。

研究機関

研究機関で働く歯科衛生士の時給は、1,100円~1,300円未満が100%となっています。研究機関で働く歯科衛生士は非常に少なく、とれるデータがなかったことが原因と推測できます。

その他

上記の働く場所に当てはまらないところで働く歯科衛生士も複数おり、そのうちの31.4%が1,100円~1,300円未満の時給で働いています。次いで900円~1,100円未満が21.6%、1,300円~1,500円未満と1,500円~1,700円未満が同列で15.7%となっています。

参照:歯科衛生士の勤務実態調査

歯科衛生士の時給を決めるときの注意点  

ここまで、働く場所による歯科衛生士の給与を見てきましたが、歯科衛生士の時給を決めるときの注意点として、歯科衛生士の時給を平均を元に決めてしまうと後悔につながる場合があります。

平均の給与は参考程度にして、自医院の給与はどのくらいにするかを決めていかなければなりません。

ここからは、歯科衛生士の時給を決める方法について紹介していきます。

歯科衛生士の時給を決める方法

ではここからは、歯科衛生士の時給を決める方法について紹介していきます。歯科衛生士の時給を決めるためには、さまざまな形で歯科衛生士の時給について調べる必要があります。ここでは、Indeedを使った歯科衛生士の時給の調べ方についてまとめていきます。

Indeedで給与検索する

まずは、Indeedで歯科衛生士の給与検索を行いましょう。Indeedには、「年収や給与を職種名で検索」する機能があり、そこで大まかな年収や時給を調べることが可能です。

「年収や給与を職種名で検索」では、キーワードに「歯科衛生士」、勤務地に自医院のある都道府県の情報を入れましょう。それから、時給、日給、週給、月収、年収と選べるプルダウンを選択し、検索をかければ値が出てきます。

自医院がある地域の時給が平均値よりも高いか、低いかも分かり、周辺の市町村の時給も一覧で見ることができます。

近所の競合医院の時給を調べる

自医院がある地域の時給を調べたら、次は近所の競合医院の時給を調べましょう。「年収や給与を職種名で検索」では、「求人」の項目を選択することができます。「求人」の項目では、入力した地域にある歯科衛生士を募集している求人を一覧で見ることができます。

たとえば、東京都練馬区で検索をかけた場合、練馬区早宮、練馬区東大泉などの該当する地域にある求人が表示されます。その中から自医院の近くの歯科医院を探し、時給いくらで歯科衛生士を募集しているか調べてみましょう

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結局、時給はいくらにするべき?

近隣の歯科衛生士を募集している求人を調べてみても、結局時給をいくらにすればいいのか分からなくなることでしょう。調べた時給より高くすればいいのか、しかしそれだと時給が高すぎて採算が合わなくなるなど、たくさんの悩みがでてくることでしょう。

ここからは、時給をいくらにすべきかをまとめていきます。

平均時給より高く設定するが高すぎてはいけない

結論からいうと、時給は平均時給より高くする必要があります。平均時給より安いと、歯科衛生士は集まりません。しかし、高すぎる時給もいけません。時給が高すぎると、なんらかの時給が高い理由があるのではと勘ぐられてしまい、逆に良い人材が集まらないのです。

では、どうすればいいのか。それは、地域で2番目に高い時給に設定することです。先ほどIndeedで調べた自医院がある地域の時給を思い出して、2番目に高い数字に時給を設定しましょう。

すでに導入している時給に惑わされない

時給を決めるときに最も注意したい点は、すでに導入している時給に惑わされないことです。すでに導入している時給が、安すぎる可能性もあります。これまでの時給に惑わされず、最適な時給を定時するようにしましょう。必要があれば、既存のスタッフの時給も変更して、スタッフ間の格差を埋めるよう心がけると良いです。

時給以外で歯科衛生士が重要視している点

ここまで、歯科衛生士が転職の際に重要視する「時給」に焦点を絞って紹介してきましたが、ここからは、時給以外で歯科衛生士が重要視している点について紹介していきます。

歯科衛生士は転職を考えるとき、どのような点を重要視して転職先を決めるのでしょうか。時給以外の重要なポイントをまとめていきましょう。

人間関係

まず、歯科衛生士が時給以外で重要視している点は「人間関係」です。人間関係は、目に見えないものではありますが、働く上で非常に重要なものです。良い人間関係を構築するのは難しく、一度壊れてしまうとあっという間に修復不可能になります。しかし、誰しもが良い人間関係を構築している職場で働きたいと考えているのです

人間関係が悪い職場では、意思疎通が上手くいかず仕事上でミスが起こったり、いじめなどの加害によって体調を崩してしまう歯科衛生士がでてきたりと、良いことはありません。院長が知らない内にスタッフ間の仲が悪くなり、職場の人間関係が悪化していることもよくあることです。

そのような状態にならないように、普段から院長が率先してスタッフ間の良好なコミュニケーションを促進する努力をする必要があります。お互いを思いやる院内文化を日頃からコツコツと積み上げていくことにより、良好な人間関係は築かれていくのです。

研修制度

研修制度も、歯科衛生士が転職をするときに重要視するポイントです。新卒の歯科衛生士はもちろん、産休や育休など長期の休みから復帰する歯科衛生士にとっても、研修制度が充実しているかどうかは気になるところでしょう。

一部の歯科施設では、研修をまったく行わず、作業している先輩を見て仕事を覚えるようにしているところもあります。しかし、それでは効率的に仕事を覚えることができないだけでなく、放っておかれているという疎外感を新人に与えてしまうことにもなりかねません。

また、研修制度がないと、先輩も新人にどのように仕事を教えたらいいのか分からず困惑してしまうこともあるでしょう。

研修制度は、新人に仕事を効率的に教えられるだけでなく、先輩たちにとっても仕事を教えやすくなるというメリットがあるのです。

福利厚生

転職をしようとしている歯科衛生士にとって、歯科施設が提供している福利厚生は重要な検討要素です。歯科施設の提供する福利厚生とは、通勤手当や住宅手当をはじめとして、短時間勤務、院内託児所、勉強会の参加費用助成や資格支援制度など、多岐に渡ります。歯科施設の個性がでるところでもあり、その歯科施設がどのような場所なのかをはかるバロメーターにもなります。

歯科施設は、一つひとつの福利厚生に対して、現実的に導入可能かどうかを検討し、魅力的な求人広告を打つためにも福利厚生を充実させる必要があります。

診療内容

診療内容も、歯科衛生士が転職先を決めるために重要な要素です。たとえば、患者さんの嚥下能力の向上などのリハビリを行いたい歯科衛生士に、歯科医師の補助をメインに行わせるとどうなるでしょうか。歯科衛生士はやりたい仕事ができないとして、離職につながってしまうでしょう。診療内容をしっかりと求人票に書いておくことで、歯科衛生士はどのような仕事をするのかイメージが付きやすくなりますし、就職後の早期離職を防ぐことにもなるでしょう。

勤務地・勤務時間

歯科衛生士の中には、勤務地がどれだけ自宅に近いかによって職場を選ぶ人もいます。また、自宅だけでなく、子どもの預け先となる保育園や幼稚園に近いかどうかも勤務先を選ぶポイントとなるのです。

また、どうしても午前中しか働けなかったり、時短でしか勤務できない人もいます。そんな事情のある歯科衛生士は、勤務時間を柔軟に変更できる歯科施設で働きたいと思うでしょう。

このように、歯科衛生士は転職先を選ぶ際に、時給以外でも重要視するポイントがあるのです。

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歯科施設の採用を行うのは、多くの場合歯科医院長です。しかし歯科医院長は、歯科の専門家であり採用の専門家ではありません。歯科衛生士が不足している現在、どうすれば自医院にあう良い人材を確保できるのか、お悩みの歯科医院長は多いでしょう。

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まとめ

今回は、各種勤務地における時給について詳細にまとめ、その上でIndeedなどを利用し自医院の競合がどのくらいの時給を出しているのかを加味し、時給を決める方法を紹介しました。その他にも、時給以外で歯科衛生士が注目するポイントもまとめています。

歯科衛生士は、現在需要と供給が追いついておらず、人手不足の常態です。圧倒的な売り手市場であり、良い人材はより魅力的な条件を出す求人に集まってしまいます。

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