歯科衛生士の「採用単価」はいくら?採用コストと採用単価の話
2022.04.19こんにちは、土屋です。
年々採用の難易度が増している歯科衛生士の採用ですが、採用するためにかかる費用がどの程度かかるものか、ご存知でしょうか。
できるだけ採用費を安くしようとしても、採用できなければ無駄になります。一方で費用をたくさんかけたからといって良い人材が採用できる保証はありません。そのため、採用コストの相場を把握して採用活動に活かすことが大事です。
そこでこの記事では、歯科衛生士の採用にかかる費用についてわかりやすく解説します。700名以上の歯科衛生士を採用してきた筆者の経験やノウハウも豊富に紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
歯科衛生士の採用単価はいくら?採用コストと採用単価の話
まず「採用コスト」と「採用単価」という言葉について知っておきましょう。下記の表をご覧ください。
採用コストとは、採用活動にかかった総額のことを指します。(この表では180万円)
採用単価とは、1人採用するのにかかった平均費用のことです。(この表では90万円)
一般的に効率的な採用活動がおこなわれたか判断する際には、採用コストの総額ではなく、採用単価のほうが注目されます。採用単価は求人サービス毎に単体で見るのではなく「採用コスト総額」÷「採用人数」=「採用単価」で見ます。(この表では90万円)
全業界・全職種の採用単価
新卒採用(2020年卒) | 93.6万円 |
中途採用 | 103.3万円 |
全業界・全職種の採用単価を把握しておきましょう。一般的に、人材を1人採用するのにかかる費用は100万円前後だということがわかります。雇用形態別の一人あたりの採用コストを見ると、中途採用が最も単価が高くなっており、一度に複数名かつ未経験者を採用する新卒採用は低単価となっています。
歯科衛生士の採用単価
それでは歯科衛生士の採用単価はいくらなのか?
結論:60万円です。
私が調べた限り、歯科衛生士の採用単価について、公表されているデータは見つかりませんでした。
したがって、包括的な話はできないため、ケース別に紐解いていきます。
・医療・福祉業界全体の採用単価は53.2万円です。(出典:マイナビ 中途採⽤状況調査2020年版)
【考察】医療・福祉業界で最も求人数が多い看護師の求人倍率が2.46倍(2019年)であるのに対して、歯科衛生士の求人倍率は20.7倍(2020年)であるため、歯科衛生士の採用単価はこの平均値よりも上回っているということが想像できます。
・歯科衛生士の人材紹介相場は理論年収の20〜30%
最近は30%指定の会社もあります。年収400万円の衛生士を紹介料25%で採用した場合の採用単価は100万円です。
【参考】一般企業の人材紹介料相場は理論年収の35%が主流です。年収600万円の人材を採用し場合の採用単価は210万円です。
・とらばーゆの「ベーシックフリー/医療特別企画/4週間」の1ヶ月掲載料は45万円です。
・ジョブメドレーで1人採用できると20〜25万円 ※下限は20万円ですが、採用競合が多い地域は25万円以上に設定しないと厳しいです。
・グッピーで1年に1人採用できると10万〜15万円
見ていただいた通り、歯科衛生士採用は、利用するサービスにおける採用単価の幅が10万円〜100万円と大きいというのが特徴です。
どうしてその差が生まれているのでしょうか?
採用サービスというのは基本的に「コスト」と「時間と手間」の関係性で成り立っています。
時間と手間をかけたくないという場合はコストが高くなり、時間と手間をかければその分コストは安くなります。
例えば、人材紹介サービスは、初期申し込みをして求人票を送ればあとは待っているだけで紹介が来ますし、日程調整や条件交渉も人材紹介会社がやってくれるので、コストが高い。
グッピーは、求人原稿作成から日々の更新、応募者対応、お祝い金の支払いまですべて医院で行わないといけないため、多くの時間と手間を取られる上に専門的な知識・ノウハウも必要となるので、その分採用できた時の採用単価が安くなります。
大事なのはその相関性とを認識しておくことです。そして、医院の状況にあわせて相関のバランスを取っていく。緊急度が高いのであれば、コスト側を高めていなくてはなりませんし、じっくり良い人材が来るまで待てるのあればコストをかけずに行っていけばいい。
よく耳にするのは「とても困っているので、なるべくはやく採用したい!…でもお金はかけられない、かけたくない」声です。
私も会社を経営しているので気持ちはとてもわかります。
しかし、ハッキリ言ってこれでは採用は見込めません。たまたま過去にラッキーヒットを打った経験があるか、または、そのような話を聞いたというだけで、基本的にそのようなことは起こりません。
採用サービスはお金をかければかけるほど速く良い人材を採用できるように設計されているのです。
以上のことを総合的に勘案し、「とにかく採用で困っている」「今すぐ採用したい」という医院様の採用単価は60万円が適正値ではないかと考えています。
60万円を基準に、サービス毎の「採用力」、「知識・ノウハウの有無」、「どれだけ手間と時間をかけれるか」、「採用できないリスクをどこまで取れるか」、などを考慮して上下に振り当てれば良いかと思います。
採用コストを節約・削減するポイント
1.既存スタッフの退職を防ぐ
採用コストを下げるのに効果が高いもの、それは退職者を出さないことです。
そんなことはわかっている!という声が聞こえてきますが。
採用ニーズが発生するタイミングの第1位は既存スタッフの退職です。つまり採用する理由として最も多いのは「欠員補充」です。当たり前ですが、そのような医院は、スタッフが退職しなければ採用の必要性がないのですから、すなわち採用コストを使わなくてよいということなので、無駄なコストを使わなくてよくなります。
さらにスタッフの退職は、採用コストだけではなく、失うものがたくさんあります。
・採用コスト
・教育コスト
・退職金
・知識(暗黙知)
・院内のモチベーション
・院内の生産性
・医院のイメージ
あらたに一人採用する費用と、これらの損失、どちらが大きいのか言わずもがなだと思います。
私のオススメは将来使うであろう採用費をスタッフの教育費として使うということです。
例えばここでは適正採用単価を60万円と提言しているので、その60万円を既存スタッフの教育費に充当させるということです。年間60万円分の教育費となると、かなりのことができます。
それで既存スタッフ技術や考え方が成長し、そして、それだけ自分に投資してくれる医院へロイヤリティも高めることができる。その良い循環を生み出していくことができます。
採用を考える前に、まずは退職をどう防ぐかということに尽力いただくのが先決だと思います。
ミスマッチを防ぐ
ミスマッチは、スタッフ採用にとって一番避けたいところです。
ミスマッチはそのまま「早期退職」に直結するため、これまで苦労して採用したのにもかかわらず、かかった費用に「研修コスト」を上乗せし水に流すようなものです。また教育担当の先輩のモチベーションや自院へのロイヤリティも失いかねません。
そのためには、面接では入職後のギャップを抑える工夫が必要となります。見学や面接では、良い部分だけではなく、悪い部分も伝える、院長だけではなく、実際に一緒に働くメンバーにも会ってもらい雰囲気をつかんでもらうなどの工夫が必要です。
そして、入職後の初期教育がとても重要です。初期教育についてはあらためて記事にしてお伝えしていきたいと考えています。
SNSを使いこなす
TwitterやInstagram、TikTokなどのSNSを活用した採用方法です。歯科衛生士が求人活動に使うToolの95%はスマホです。求職者でSNSを活用していない人はほとんどいません。医院が欲しい人材のターゲットと距離を縮めることができる採用ツールとも言えるでしょう。
しかし、運用にはノウハウが必要になることと、日々トレンドが変化するので、効果を出すのが難しいです。ターゲットとする年代のスタッフが医院にいれば効果的な使い方について相談してみるといいでしょう。
また、患者さん向けのアカウントを運用している場合は、患者さん向けとは別に「採用専用アカウント」をつくり運用することオススメします。患者さんと求職者では気になるポイントが異なるからです。
助成金を活用する
昨今の新型コロナウィルス影響による事業所に対して休業要請に伴う助成金や補助金の制度も、有効活用すべきです。申請の対象条件は国の方針、都道府県やエリアによってまちまちですが、申請できるものは活用しましょう。助成金についてはボリュームがあるので、今後、別記事でお伝えしていきます。
歯科医院を最も苦しめるのは「内部コスト」
採用コストには、外部サービスにかかる「外部コスト」、医院内の採用業務にかかる「内部コスト」の2種類があります。今まで触れてきた求人媒体や人材紹介料などは「外部コスト」にあたります。
一方、見落としがちなのが「内部コスト」で、院内の採用業務にかかる費用全般を指します。
・院長がが採用活動全般に充てる時間(人件費)
・見学や面接に充てる時間
・スタッフがブログやSNS更新に充てる時間
・その他、院長やスタッフが採用に費やす時間を人件費換算したもの
・勤続お祝い金・勤続支援金
・患者さんの診療にかける時間分の診療売上ロス
などです。中でも最もコストが高いのが「院長の人件費」です。求人原稿作成や管理、スカウトメール、採用セミナーなどで勉強する時間など、すべてにコストが発生しているということです。
従って、採用単価を下げるために院長自身が身を削って頑張るということも、TOTALで考えると、採用コストがかかっているという認識を持つことが大切です。
採用代行サービスを活用して採用コストを削減
現在、歯科業界に限らずもっとも注目されているサービスが採用代行です。採用代行とは、採用活動にまつわる業務を外部の企業が代わりにおこなうサービスのことで、別名「RPO(Recruitment Process Outsourcing)」とも呼ばれています。
採用工数や人手不足が一気に解消され、診療やスタッフマネジメントなどのコア業務に集中できるメリットがあります。ただし、すべてを一括外注してしまうと、自社内に採用ノウハウが蓄積できないというデメリットが発生する可能性もあるということを頭に入れておきましょう。
一定の費用はかかりますので、これまでかかっていた採用コストと比較しながら効率よく活用することをおすすめします。
採用代行サービスが注目されている理由
現在は、売り手市場を背景に採用競争は激化し、採用活動・人材獲得に苦戦する医院が増えているように感じます。
採用手法も、求人広告やエージェント利用、リファラル採用、ダイレクトリクルーティングなど多様化しています。そして現代の採用は「集客」だけではなく、入職の意思決定をしてもらうまでのフォローアップを主とした「惹きつけ」も求められ、求職者1人当たりに割く時間も年々増えてきています。
このような要因から、「気づいたら手に負えないほどの業務を抱えてしまって、本来やるべきことに注力できていない」といった院長も多いのではないでしょうか。
さらに、この先「タスク型」と呼ばれる雇用を取り入れる企業や医院が増えると予想されています。タスク型とは、その時生まれたプロジェクトに必要な人材を、必要な期間だけ採用するという働き方の形態です。
採用代行は、そんな時代にあった「必要なときに、必要なだけ」利用できるサービスなのです。
まとめ
- 採用コストは採用にかかった総額で、採用単価は1人採用するのにかかった平均費用のこと
- 一般的には採用単価が注目される
- 全業界・全職種の採用単価は100万円前後
- 歯科衛生士の採用単価は60万円
- 歯科衛生士の採用単価は10万円〜100万円とサービスによっての幅が大きい
- 「コスト」と「時間と手間」の関係を認識し、医院の状況に合わせて見ることが大事
- 緊急性の高い医院はお金をかけないと採用できない
- 採用コストを節約・削減するポイントは以下の通り
- 1.既存スタッフの退職を防ぐ
- 2.ミスマッチを防ぐ
- 3.SNSを使いこなす
- 4.助成金を活用する
- 歯科医院を最も苦しめるのは「内部コスト」である
- 内部コストで最も高いのが「院長の人件費」
- 採用代行サービスを活用して採用コストを削減するのがオススメ
- 採用代行サービスはいまの時代にあったサービス
今回は、歯科衛生士の採用単価について説明してきました。
歯科衛生士の採用は、売り手市場を背景に採用競争は激化し、採用単価は上がり続けています。採用単価を下げるポイントは「採用だけで考えないこと」です。はじめの一歩はスタッフにとって本当に良い医院がなにであるのかを考えるところからです。歯科の経営は本当に難しいですね。
採用で困ったときはいつでも協力いたしますので、いつでもご連絡ください。一緒にがんばっていきましょう!
この記事を書いた人
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