「国民皆歯科健診」施行でどう変わる?歯科衛生士の採用と教育が急務な予感 !?
2022.05.30こんにちは、土屋です。
2022年5月30日、歯科業界を揺るがすニュースが飛び込んでまりました。
日本政府が6月にまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」に、全ての国民に毎年の歯科健診を義務付ける「国民皆歯科健診」の導入に向けた検討をする内容を盛り込むことが関係者への取材で分かった、という内容のもの。
丈夫な歯を守ることで他の病気の誘発防止や健康維持に取り組み、医療費抑制につなげる狙いとのこと。
この記事ではその「国民皆歯科健診」についての予測と対策について解説していきます。
国民皆歯科健診とは?
実はこちら、突如湧いた話ではなく、昨年の衆院選の自民党公約に盛り込まれていたものです。
2021年6月に、自民党内で議員グループ「国民皆歯科健診実現議連」が発足し、医療費全体の抑制効果も考慮し、皆健診制度の検討を進めてきておりました。
同年10月、こちらの議連の働きかけにより、衆院選で「生涯を通じた歯科健診の充実(国民皆歯科健診)を進めます」と自民党の公約に記された。
これを受け、日本歯科医師連盟では「国民皆歯科健診」の啓発ポスター(上記参照)を作成し、衆院選公示日まで「印刷して歯科医院の診療室などにご自由に掲示ください」などと促していました。
旗振り役は「山田議員」と「日本歯科医師連盟」
旗振り役である山田議員は「日本歯科医師連盟」の強力なバックアップを受けているとのこと、7月10日に投開票される見込みの参院選で、日本歯科医師連盟の組織代表候補者として比例代表で立候補する予定だそうです。
具体的な制度の中身は?
制度の内容、骨子はまだ不透明ですが、一部の報道では下記のようなことが書かれています。
骨太の方針2022の原案に示された、歯科についての主な取り組みは以下の7つ。
① 全身と口腔の健康に関する科学的根拠のさらなる集積
② 生涯を通じた歯科検診、いわゆる国民皆歯科健診の具体的な検討
③ オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実
④ 歯科医療職間、医科歯科連携をはじめとする関係職種・機関間の連携
⑤ 歯科衛生士・歯科技工士の人材確保
⑥ 歯科におけるICTの活用推進
⑦ 市場価格に左右されない歯科用材料の導入促進
これらに取り組むことで、歯科保健医療提供体制の構築と強化を図るとのこと。
(WHITE CROSS)
具体的な手法としては、健保組合などが毎年行う健康診断の際に唾液を提出してもらい、歯周病などの可能性がある人を受診につなげる案が浮上している。自民には、来年にも導入までの具体的なスケジュールを記した議員立法を制定する動きがある。
(産経新聞)
政府・自民党では令和7年頃の導入を目指す。
(産経ニュース)
市場価格に左右されない材料の導入推進も盛り込まれている。
(FNNプライム)
「虫歯治療に使うセラミックの材料になるジルコニアは、とても高価で……。保険適用は、ちょっと難しいんです。レジンへの適用を、まずは、がんばらせていただきたい。五輪が無理でも、大阪万博までに。そうじゃないと、(銀歯じゃ)本当に外国人にびっくりされてしまいますよ」山田氏インタビューより
(FLASH)
自民党の公約によると、「現在高校までで終わっている歯科検診を全国民が毎年一回受信できる制度として実現していく」という記載があります。
この制度の実現に向け、国として労働安全衛生法の改正を含めた新たな制度に向けた法整備を進めていただくことを応援すると共に、歯科医院側でも早期に手立てをしていく必要がありそうです。
国民皆歯科健診の施行によってどう変わる?
未確定な要素が多いため、ここからはあくまでも主観的な予測と解説になります。
まず健診の窓口となる「健保組合などが毎年行う健康診断」について。
私も企業人事を15年以上経験してきたので言えますが、
健康診断はなかなか予約が取れません。
1番の理由は、需要に対して枠が足りていないから。いわゆるキャパオーバー状態。そして、健康診断のキャパシティーを最も左右するのは、病院の数ではなく、対応する看護師の数です。看護師不足によって予約が取りにくい状況が続いているのです。
この話が「国民皆歯科健診」と、なぜ関係があるのかは後ほど解説します。
次に歯周病患者の数の話です。厚生労働省の平成23年歯科疾患実態調査によると、日本国内における歯周病患者の数は成人の約8割にも及ぶという調査結果が出ています。
上記で触れた産経新聞の記事によると「具体的な手法としては、健保組合などが毎年行う健康診断の際に唾液を提出してもらい、歯周病などの可能性がある人を受診につなげる案が浮上している」とあります。
この通りのオペレーションに仮になった場合、歯周病の罹患率を勘案すると、「歯周病の疾患はありながら、現在は歯科医院には通っていない」という多くの潜在層が、義務的に、一気に、歯科医院に流れてくることが予想されます。
求人倍率:看護師2.34倍、歯科衛生士20.7倍!という事実
すると、どうなるか。
健康診断で歯周病にチェックが入った方々が歯科医院に押しかけてくる。
その時、それに対応できる「歯科衛生士がいる医院」と「歯科衛生士がいない医院」で対応に大きな差が出るのは一目瞭然です。
従って、歯科医院は
・歯科衛生士の採用
・歯科衛生士の育成
・そのための職場環境の整備
が急務となります。
しかしそこには大きな課題が。なんと、看護師の求人倍率は2.34倍(※1)なのに対して、歯科衛生士の求人倍率は20.7倍(※2)もあり、看護師に比べて歯科衛生士の方が10倍も採用難易度が高いという事実。
求人倍率2倍の看護師でも人手不足でによって健診の予約が取りにくいという状況なのに、求人倍率20倍超の歯科衛生士がこれほど不足しているこの業界はどうなってしまうのだろうと、少し頭を抱えてしまいますね。
しかし頭を抱えているわけにはいきません。
施行が決まってからは各医院一斉に動き始めると思うので、それからでは出遅れてしまう。
今からできる準備はしっかりしておくしかありません。
※1. 2019年度日本看護協会発表
※2. 全国歯科衛生士教育協議会「歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告」より
ここでもう一つ、自民党の公約を貼っておきます。
なんと、働き方改革や人材確保対策の中に「歯科医師」「歯科衛生士」「歯科助手」などの文言が見当たりません…。
ますます自分たちでなんとかしないといけませんね!
一緒にがんばりましょう!
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以上です。
この記事を書いた人
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