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なぜ歯科衛生士が集まらない?お金をかけずに採用難から抜け出す方法

土屋 雅臣

デンタルHR総研株式会社 代表取締役
GMOインターネットグループ(東証プライム)など、IT業界での人事部長を15年経験した後、国内最大手の審美歯科グループにて歯科衛生士採用のための会社立ち上げ代表取締役を務める。歯科衛生士採用560名、離職率10%未満を達成。2022年、デンタルHR総研株式会社を設立。歯科業界初となる完全報酬型の採用代行サービスを展開中。
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こんにちは、土屋です。

年々採用の難易度が増している歯科衛生士の採用ですが、歯科衛生士が集まらないのを「採用難」だからと、外部要因だけのせいにしていませんか?

こんな採用難の時代でも、歯科衛生士の採用に成功している医院はありますし、しかも給与や休みなどの条件がものすごく良いかというとそうでもありません。ではなぜそのような医院が存在するのか?どのようにして歯科衛生士を集めているのか?

そこでこの記事では、歯科衛生士の採用難から抜け出す方法についてわかりやすく解説します。2016年から5年で500名以上の歯科衛生士を採用してきた筆者の経験やノウハウも豊富に紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

なぜ歯科衛生士が集まらない?お金をかけずに採用難から抜け出す方法

歯科衛生士の採用難から抜け出すには2つのアプローチがあります。

上の画像をご覧ください。左は穴のあいたバケツに水を注いでいるので水がこぼれ出ている。右は穴が空いていないバケツに水を入れているからこぼれ出ない。
バケツの穴を「退職」、水を注ぐことを「採用」と置き換えて考えると、まずやるべきことは当然バケツの穴を塞ぐこと、つまりスタッフが退職しない環境をつくることです。

したがって、採用難から抜け出す最善のアプローチは、
1.まず穴を塞ぐ(退職を減らす)
2.次に水を注ぐ(応募を増やす)

という手順を踏むことです。

しかし、採用難で苦しんでいる医院のほとんどは、手順を無視して(あきらめて)穴が塞がっていない状態で水を注ごうとする。するとどうなるか?
→ アピールポイントが条件頼みになり、良い人が集まらない
→ 医院見学や面接後に辞退される
→ 採用してもすぐに退職する
→ 人が定着する仕組みが回らず、ながく働く文化も育たない
→ 常に欠員補充を繰り返す
というスパイラルに入ります。

したがってお金をかけずに採用難から抜け出す方法の最優先事項は「まず退職を減らす」ことなのです。

退職を減らすポイントは「エンゲージメント」を高めること

退職を防ぐためにはスタッフの「エンゲージメント」を高めることが重要です。エンゲージメントとは一般には約束や契約を意味しますが、人事分野では「働きがい」を指します。一般企業においても、生産性改善や社員の離職防止などにつながるとして、重視する企業が増えています。

エンゲージメントを構成する主な要素は以下の通りです。

  • 職務内容に対するやりがい
  • 自己成長の機会
  • 院長やスタッフとの人間関係
  • 職場環境
  • 自分や自分の仕事への院長・スタッフの承認
  • 医院のビジョンへの共感や院長への信頼
  • チームでの協力や挑戦を促す医院風土

エンゲージメントチェック

自院のエンゲージメントをチェックしてみましょう。各項目について、左右にスライドし、最後に「評価を見る」を押してください。

職務内容に対するやりがい

低い
高い
自己成長の機会

低い
高い
院長やスタッフとの人間関係

良くない
良い
職場環境

良くない
良い
自分や自分の仕事への院長・スタッフの承認

低い
高い
医院のビジョンへの共感や院長への信頼

低い
高い
チームでの協力や挑戦を促す医院風土

ない
ある

「働き方改革」できていない医院は完全に選ばれない

日本政府が2016年に働き方改革を打ち出して以降、労働市場は長時間労働の是正など「働きやすさ」の面では改善が進みました。厚生労働省によると、労働者1人当たりの年間総実労働時間は2020年に1,685時間と2016年比5.5%減。有給休暇取得率は7.2ポイント上昇の56.6%と過去最高になりました。

歯科医院においても、以下のような医院はもう完全に選ばれない時代となりました。

  • 社保・厚生年金がない
  • 残業がある
  • 残業しても残業代が払われない。または残業代の支給が1分単位ではない
  • 週の就業時間が40時間以内に収まっていない
  • 週休2日未満
  • 有給休暇が取得できない、しにくい
  • 産休・育休が取得できない、しにくい
  • 雇用形態や職種によって不合理な待遇差がある
  • 法令遵守の意識が低い

政府主導で推し進めている「働き方改革」は、スタッフの健康・安全・福利厚生の観点から法整備された、スタッフが長く働き続けるための労働環境づくりです。確かに、良い労働環境が働く意欲のきっかけにはなるでしょう。しかし、労働者が仕事を長く続けるための「働きたい」という意思への原動力とはいえないというのが最近の考え方です。

つまり、この「働きたい」という意思が「働きがい」であり、働きがいがなければ長く活躍してくれるスタッフは育ちません。

医院が「働き方改革関連法案」の罰則をただ逃れるべく、現場の状況を把握しないまま労働時間の短縮・休暇取得を推し進める事ばかりに終始していると、スタッフの働きがいを削ぐばかりでなく医院への信頼も失ってしまいます。これでは雇用の維持どころか、退職を促してしまう恐れもあります。

「乾けない世代」30代以下の価値観を知る

私が社会に出た頃は、物質的な豊かさを求めていました。それは、子供の頃からの生活が影響していると思います。裕福ではない家庭で育ったため、家にあるものは普通のもの。もっと大きなテレビがほしい、もっといい車に乗りたい、海外旅行に行きたい。そのように、物欲を周囲からも感じながら生きていきました。

一方で、IT批評家の尾原和啓氏は、著書『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』で、30代以下の世代を「乾けない世代」と表現して、彼らの価値観と仕事に対するモチベーションが、私を含めたそれまでの世代と大きく違うことを解説しています。

30代以下の「乾けない世代」は、生まれたときから社会に「ないものがない」時代で育ってきました。必要なものはすべて揃っており、子供の頃からパソコンや携帯電話に触れ、娯楽も充実している。何かに飢える経験していません。そのため、世の中になにかを生み出すという達成感を経験していないのです。

それ以前の、私を含めた「乾いている世代」は、社会に「ないもの」を埋める仕事をしてきました。過去になかったものを生み出して生活を豊かにするという価値観をベースに、仕事では働けば働くほど、経済や社会が成長し、自分への報酬も増えるというのがモチベーションでした。

乾けない世代が重要視する「幸せの3要素」

尾原氏は違う著書で、アメリカ人心理学者マーティン・セリグマンが唱えた「幸せの5つの軸」というものが、上の世代と乾けない世代では違うと説明しています。

アメリカ人心理学者マーティン・セリグマンが唱えた「幸せの5つの軸」というものがあります。その5つとは「達成」「快楽」「良好な人間関係」「意味合い」「没頭」です。「乾いている世代」は、最初の2つ「達成」「快楽」を重視して働いていました。一生懸命仕事をし、高い報酬や出世という「達成」を、美食や物欲を満たすという「快楽」を追い求めました。「成功者」と言われるようなワンランク上の生活を手に入れることが幸福だったのです。しかし「乾けない世代」は、「ないものがない」社会で育ったので、達成や快楽を満たすということに重きを置いてはいません。そこに対する飢えが少ないのです。

それよりも精神的な要素が強いです。
つまり「良好な人間関係」「意味合い」「没頭」という後者の3つの軸に幸せの価値をおいています。ある意味、ぜいたくになったという言い方もできるかもしれません。

引用元:プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる (幻冬舎)

よって乾けない世代は、医院が掲げた目標を達成する喜びや、贅沢な暮らしをするために、自分の時間や休みを削って働くことに懐疑的です。それよりも人間関係のよい職場で働き、意味のある仕事をし、好きなことに費やす生活のほうに価値があると思っています。

「働き方改革」から「働きがい改革」の時代へ

こうした若者を職場に定着させるためには、「働きやすさ」と「やりがい」を合わせた「働きがい」のある職場とすることが大切であり、そのための改革が求められます。アブラハム・マズローは、人間は誰もが自己実現に向かって5段階の欲求を満たしながら成長すると唱えました。この考え方に基づいて考えると、働き方改革は「生理的欲求」と「安全欲求」に相当し、上で挙げたエンゲージメントを高める要素は含まれていません。

「マズローの欲求5段階説」

上で挙げたエンゲージメントを高めていこうとすると、もう働き方改革だけでスタッフの定着を求めていくのは無理があるのは一目瞭然です。

「給与」と「休み・時間」だけでは、もう良い人材は採用できない

採用できなくて困っていて、週休3日・月給30万円にしたという医院があります。しかしこれでは良い人材は採用できません。なぜなら条件だけで集めた人材は入職後のエンゲージメントが確保できないからです。

採用というのは、何よりも質が大事です。採用は「今の自医院」に必要な人を採用するのではなく、「未来の自医院」のためにするものだからです。

エンゲージメントを高めるための施策はたくさんあります

ではエンゲージメントを高める施策は?いろいろありますが、代表的なものは以下の通りです。

  • 医院のビジョンを掲げ、スタッフと共有する
  • 就業規則や医院の価値観をまとめたものをスタッフがいつでも見られる場所に設定する
  • 人事評価制度を導入する、あれば最新のものにバージョンアップする
  • スタッフとの定期面談を実施する
  • 院長とスタッフの日々のコミュニケーション目標を定め実施する
  • 院内の人間関係がよくなるたの仕掛けを設ける
  • 昇格や昇給時にはその評価の理由をしっかりフィードバックする
  • 働き方改革の不備をチェックし不足があれば至急改善する

その他、エンゲージメントが高い企業の事例としては、表彰制度や日々のありがとうをカードにする、改善項目をアンケート化し、社内プロジェクトで改善していくなど色々な取り組みがありますので、調べて良いなと思う施策があれば取り入れてみてはいかがでしょうか?

以上、今回はお金をかけずに採用難から抜け出す方法と題して、主に退職を抑制するための方法について解説してきました。採用方法については別記事で詳しく解説しているので、そちらを参照ください。

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まとめ

  • 採用難から抜け出すには「退職を減らす」と「応募を増やす」の2つのアプローチがある
  • 最優先事項は「退職を減らす」こと
  • 退職を減らすポイントは「エンゲージメント(働きがい)」を高めること
  • 「働き方改革」できていない医院は完全に選ばれない
  • 30代以下の「乾けない世代」の価値観を知ることが大事
  • 乾けない世代が重要視する「幸せの3要素」は「良好な人間関係」「意味合い」「没頭」
  • 世の中は「働き方改革」から「働きがい改革」の時代へ変化している
  • 条件だけでは良い人材は採用できない
  • エンゲージメントを高めるための施策はたくさんある
  • 採用方法については別記事を参照

本記事ではお金をかけずに採用難から抜け出す方法をお伝えしてきました。記事の内容は本質的なことですが、実際に行おうとすると非常に難しい課題です。すぐに穴が塞がるかというとそれはほぼ不可能に近いと思います。しかしながら、人事の仕事というのは常に時代背景を読み、その時代にあった施策を常に創り、運用していくことです。非常に難しいですが、やりがいのある仕事です。ぜひ、貴院でも少しずつでも実践いただけますと、とっても嬉しいです!


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  • この記事を書いた人

土屋 雅臣

デンタルHR総研株式会社 代表取締役
GMOインターネットグループ(東証プライム)など、IT業界での人事部長を15年経験した後、国内最大手の審美歯科グループにて歯科衛生士採用のための会社立ち上げ代表取締役を務める。歯科衛生士採用560名、離職率10%未満を達成。2022年、デンタルHR総研株式会社を設立。歯科業界初となる完全報酬型の採用代行サービスを展開中。
筆者のプロフィール紹介はこちら

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