2024年12月開始!保険証廃止で歯科医院はどう変わる?
2024.12.192024年12月から、健康保険証が原則廃止となり、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替わることが予定されています。
政府は、医療DX推進の一環として、医療現場のデジタル化を推進しており、マイナ保険証の利用促進はその中核を担う施策です。しかし、この変更は医療機関、特に歯科医院の運営に大きな影響を与えることが予想されます。
そこで今回は、保険証廃止によって歯科医院がどのように変わるのか、そして、どのような対応が必要となるのか解説していきます。保険証廃止の概要、歯科医院への影響、そしてメリット・デメリットまで、幅広くご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
保険証は廃止され「マイナ保険証」へ
2024年12月から、健康保険証が原則廃止され、マイナンバーカードが保険証として利用されることが決まりました。
現行の保険証は、2024年12月2日以降からは新たに発行されなくなります。マイナンバーカードを保有していない場合でも、現行の保険証は有効期限までの間、最長1年間は使用することが可能です。
マイナンバーカードには、氏名、住所、生年月日などの基本情報に加えて、健康保険の情報も記録されており、医療機関では、カードリーダーを導入してこれらの情報を読み取ることができるようになります。
また、マイナポータルを利用すれば、患者さんが自身の医療情報を確認することもできます。これにより、患者さん自身の健康管理への意識向上も期待できるでしょう。
保険証廃止による歯科医院への影響
保険証が廃止され、マイナ保険証への変更は、歯科医院の運営にも大きな影響を与えると予想されます。
- 業務が複雑化する
- コストがかかる
- 運営面での負担が大きくなる
これらの影響について詳しく見ていきましょう。
業務が複雑化する
保険証が廃止されマイナ保険証が導入されると、歯科医院の業務の複雑化が予想されます。
まず、これまで保険証の確認のみで済んでいた受付業務ですが、マイナ保険証の読み取りやオンライン資格確認作業といった対応が必要になります。患者さんのマイナンバーカードの読み取り操作や、システムへのアクセスに手間取る可能性も高く、最初のうちは受付時間が長くなることも懸念されるでしょう。
また、公費負担医療への対応も煩雑になります。医療証の種類によって手続きが異なるため、窓口で確認すべき事項が増加します。
これらの要因が重なり、受付業務の負担が増大し、待ち時間が長くなる可能性があります。スムーズな受付業務を実現するためにも、事前の準備や人員配置の工夫、患者さんへの丁寧な説明が重要です。
コストがかかる
保険証廃止に伴い、歯科医院はマイナンバーカードを読み取るための機器の導入が必要になります。カードリーダーやパソコンなどの設備投資には、ある程度の費用がかかり、特に小規模の歯科医院にとっては、これらの導入費用が経営を圧迫する可能性も懸念されるでしょう。
さらに、オンライン資格確認システムの運用には、通信回線費用やシステムメンテナンス費用などの維持費も発生するでしょう。
一方で、これらの費用負担を軽減するための補助金制度も存在します。補助金制度については次の項目で詳しく紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
運営面での負担が大きくなる
マイナ保険証が導入されることで、医院長は受付スタッフへの研修を求められる場合もあります。システムの操作方法やトラブル対応、患者さんからのお問い合わせ対応など、業務をスムーズに行うにはスタッフへの教育は欠かせません。
このような対応は、歯科医院にとって大きな負担になる可能性もあります。限られた人員と時間で、新たな業務に対応していくためには、研修や人員配置の見直しなどをして、抜本的な対策が必要となるでしょう。
保険証廃止により歯科医院が行うべき対応は?
保険証廃止に伴い、歯科医院は受付対応やシステム運用面でいくつかの対応を行う必要があります。スムーズな移行のために、事前の準備が重要です。
- 受付対応・問い合わせ対応のマニュアルを整備する
- ハード面を整える
- システムトラブル発生時の対応策を練っておく
- 補助金を活用する
- ポスターやパンフレットで患者さんへ周知する
以上の対応について詳しく見ていきましょう。
受付対応・問い合わせ対応のマニュアルを整備する
受付時の患者さんへの対応をスムーズに進めるためには、受付対応や問い合わせ対応に関するマニュアルをあらかじめ整備しておくことが重要です。
例えば、受付時に患者さんをお待たせすることなくスムーズに保険証を確認するために、以下のような内容を盛り込んだマニュアルを作成しておくと安心です。
- 「保険証のご提示をお願いします」とだけ伝えるのではなく、「従来の保険証をお持ちの方は保険証、マイナンバーカードをお持ちの方はカードリーダーにマイナンバーカードを置いていただいても結構です」と案内する。
- マイナ保険証利用時に「オンライン資格確認」でエラーが発生した場合の対応方法を明確にしておく。
- 「マイナ保険証とは何か」「保険証が廃止されるとどうなるのか」といった患者さんからの問い合わせに対し、適切な回答ができるようFAQ集を作成しておく。
マニュアルを整備しておけば、患者さんの不安を軽減し、スムーズな受付業務を実現できるでしょう。
ハード面を整える
保険証廃止に伴い、歯科医院はマイナ保険証に対応するためのハード面の整備が必要になります。具体的には、マイナンバーカードを読み取るためのカードリーダーの設置が必須です。
また、カードリーダーだけでなく、パソコンやネットワーク環境も適切に整備する必要もあるでしょう。十分な処理速度を持つパソコンと安定したインターネット回線は、スムーズなオンライン資格確認に不可欠です。
さらに、これらの機器を安全に運用するためのセキュリティ対策も重要です。ウイルス対策ソフトの導入や、アクセス制限の設定など、適切なセキュリティ対策を講じて情報漏洩のリスクを最小限に抑えましょう。
システムトラブル発生時の対応策を練っておく
マイナ保険証の導入は、新システムであるがゆえに、システムトラブルが発生する可能性も想定しておきましょう。
システムトラブルが発生した場合、患者さんの受付や診療情報へのアクセスができなくなるなど、歯科医院の運営に大きな支障をきたすことが考えられます。
トラブルによってオンライン資格確認システムが利用できない場合は、従来の保険証のコピーや患者さんの氏名、住所、生年月日などを確認することで、一時的に診察を行うことを検討します。また、システムトラブル発生時に患者さんへの案内をスムーズに行うため、院内掲示やホームページなどで周知しておくことも重要です。
さらに、システム障害発生時の連絡先を確認しておきましょう。迅速な対応をしてもらえるよう、どこに連絡すればいいのか事前に確認しておくことが大切です。
補助金を活用する
保険証廃止に伴い、歯科医院ではマイナ保険証に対応するためのシステム改修が必要になります。このシステム改修には費用がかかりますが、国は補助金の交付で歯科医院を支援しています。補助金を活用することで、システム改修費用の一部を賄うことができます。
厚生労働省の「医療機関・薬局における顔認証付きカードリーダーの増設支援」では、顔認証付きカードリーダーの購入費用・工事費に対して1/2を補助しています。
また、各自治体でも独自の補助金制度を設けている場合があるため、お住まいの自治体のホームページなども確認してみましょう。
ポスターやパンフレットで患者さんへ周知する
保険証廃止に伴い、患者さんへの周知は欠かせません。スムーズな移行のためにも、ポスターやパンフレットを作成し、院内に掲示したり配布したりすることで、患者さんへの丁寧な情報提供を行うことが重要です。
ポスターやパンフレットでは、マイナ保険証の利用方法や、保険証廃止に関する情報を分かりやすく伝えましょう。例えば、マイナ保険証の読み取り方法や、マイナンバーカードがない場合の受付手順などを記載して患者さんの不安を軽減し、スムーズな受付業務を実現できます。
具体的には、マイナ保険証を読み取る機械の設置場所や操作方法を写真付きで説明したり、よくある質問と回答を掲載したりすることで、患者さん自身で確認できる体制を整えましょう。専門用語を避け、イラストや図表などを活用して視覚的にも理解しやすい情報提供を心がけてください。
これらの対応を事前にしっかりと行うことで、混乱を最小限に抑え、スムーズな移行を実現できるでしょう。
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保険証廃止とマイナ保険証のメリット
保険証が廃止され、マイナ保険証が導入されることで、患者さんにとっても、歯科医院にとっても、いくつかのメリットがあります。
- 患者さんの医療情報へのアクセスがしやすくなる
- 診察が効率化して待ち時間が短縮できる可能性がある
- 医療費の透明性が向上する
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
患者さんの医療情報へのアクセスがしやすくなる
マイナ保険証を利用することで、患者さん一人ひとりの医療情報へのアクセスが容易になります。
マイナ保険証には、患者さんの薬剤情報やアレルギー情報などを記録できるため、医師は医療情報を迅速に把握し、適切な診断や治療を行うことができます。過去の治療歴や投薬歴なども確認できるため、より的確な判断が可能になり、診察時間の短縮にも貢献するでしょう。
診察が効率化して待ち時間が短縮できる可能性がある
マイナ保険証を利用することで、患者さんの診察が効率化し、待ち時間が短縮できる可能性があります。従来の保険証では、患者が来院するたびに保険証の確認や情報の入力が必要でした。しかし、マイナ保険証であれば、カードリーダーで情報を読み取ることで、これらの作業を簡略化できます。受付での手続きがスムーズになり、待ち時間の短縮につながる可能性が期待されています。
医療費の透明性が向上する
医療費の透明性向上は、マイナ保険証導入による大きなメリットの一つです。従来の紙の保険証では、自身の医療費の情報を得るためには、医療機関や保険者に問い合わせる必要がありました。しかし、マイナポータルを活用することで、受診した医療機関名、診療内容、医療費の金額などをオンラインで確認できるようになります。
これにより、患者さん自身は医療費の内容を容易に把握できるようになり、医療機関との信頼関係の構築にもつながります。また、医療費の情報が可視化されることで、医療費の節約意識の向上も期待できるでしょう。
保険証廃止とマイナ保険証のデメリット
保険証廃止とそれに伴うマイナ保険証への移行には、いくつかのデメリットも存在します。
- マイナンバーカード未取得者が多い
- システムトラブル発生時のリスクがある
- 個人情報漏洩のリスクがある
以上のデメリットについても確認していきましょう。
マイナンバーカード未取得者が多い
保険証廃止に伴い、マイナンバーカードの取得が必須となりますが、現状では取得率が低い点が課題です。デジタル庁の発表によると、人口に対するマイナンバーカードの保有枚数率は75.7%です。依然として3割程度の国民がマイナンバーカードを取得しておらず、保険証廃止による影響が懸念されます。
マイナ保険証による受付が100%になるにはまだまだ時間がかかり、しばらくは、従来の健康保険証とマイナ保険証の両方で受付を行う「ダブルスタンダード」の状態が続くでしょう。
参考:マイナンバーカードの普及に関するダッシュボード|デジタル庁
システムトラブル発生時のリスクがある
システムトラブル発生時のリスクも挙げられます。
オンライン資格確認システムに障害が発生した場合、医療機関での診療に支障が生じる可能性があります。緊急時や災害時における対応も課題となるでしょう。万が一、システムトラブルが長引けば、医療機関の運営にも深刻な影響を与える可能性もあるでしょう。マイナンバーカードと健康保険証の併用期間を設けるなど、混乱を最小限に抑える対策が求められます。
個人情報漏洩のリスクがある
個人情報漏洩のリスクも無視できません。マイナンバーカードには、氏名、住所、生年月日や税や年金など多くの個人情報に加えて、医療情報も紐付けられます。そのため、マイナンバーカードの紛失や盗難、システムへの不正アクセス等により、これらの情報が漏洩するリスクが懸念されています。
万が一、情報漏洩が発生した場合、個人情報の悪用やプライバシー侵害といった深刻な被害につながる可能性があります。また、医療情報が漏洩した場合、個人の健康状態や病歴などが第三者に知られることになり、偏見や差別を受ける可能性も否定できません。
政府はセキュリティ対策を強化することで、個人情報漏洩のリスクを最小限に抑えるとしていますが、システムの脆弱性やヒューマンエラーなど、完全なリスクの排除は難しいのが現状です。そのため、マイナ保険証利用にあたっては、個人情報保護の観点からも慎重な対応が必要です。
保険証廃止によるよくある質問
保険証廃止に伴うよくある質問とその回答をまとめました。
- マイナンバーカード未取得者への対応は?
- 個人情報の安全性はどうなる?
- 加入する保険者が変わった場合はどうなる?
それぞれの回答を見ていきましょう。
マイナンバーカード未取得者への対応は?
保険証が廃止されても、マイナンバーカードを取得していない、あるいは取得を希望しない患者さんもいらっしゃいます。このような患者さんに対しては、資格確認書が利用できます。資格確認書は、健康保険に加入していることを証明する書類であり、有効期限は約1年間です。資格確認書があれば、保険証と同様に保険診療を受けることができます。
歯科医院としては、マイナンバーカードの取得状況に関わらず、患者さんがスムーズに受診できるよう、資格確認書についても周知しておくことが重要です。
掲示物などで案内したり、ホームページに掲載したりして、患者さんに安心して受診してもらえるよう努めましょう。
個人情報の安全性はどうなる?
マイナンバーカードと紐付けられた医療情報は、高度なセキュリティ対策が施されたシステムで管理されます。不正アクセスや情報漏洩のリスクを最小限に抑えるためのさまざまな対策が取られています。
具体的には、データの暗号化やアクセス制御などが挙げられます。医療機関側も、厳格なセキュリティ管理基準を遵守する必要があるでしょう。
政府は、国民の不安を払拭するために、セキュリティ対策の強化や情報公開を進めています。安心してマイナ保険証を利用できるよう、さらなる安全性の確保に努めています。
加入する保険者が変わった場合はどうなる?
転職や引っ越しなどで加入する保険者が変わった場合、手続きが必要になるのかどうか、気になる方もいるかもしれません。
マイナンバーカードを健康保険証として利用する場合でも、保険者が変わった際は、これまでと同様に手続きが必要になります。具体的には、新たに加入した保険者への異動届の提出が必要です。
異動届を提出することで、新しい保険者でマイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになります。
参考:マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問|厚生労働省
まとめ
2024年12月から、健康保険証が廃止され、マイナ保険証が原則利用されるようになります。この変更は歯科医院にとって、業務フローの見直しやシステム改修など、対応が必要となる大きな変化です。受付業務の複雑化、システム導入・維持コストの増加、そしてシステムトラブル発生時の対応など、運営面での負担増が予想されます。
この変化は、歯科医院にとって大きな挑戦となりますが、デジタル化の進展による医療の質向上を目指し、前向きに取り組むことが重要です。
歯科医院は、スムーズな移行のために、受付対応や問い合わせ対応マニュアルの整備、必要な機器の導入、システムトラブル発生時の対応策の準備など、事前の対策を講じる必要があります。補助金の活用も検討し、患者さんへの周知も積極的に行いましょう。
この記事を書いた人
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