
こんにちは、土屋です。
2016年から560名以上の歯科衛生士を採用してきました。歯科衛生士の離職率は30%以上と言われている中、私が採用した方の離職率は9.6%です。この記事では、そんな私の経験をもとに、「歯科衛生士が採用できない1番の理由」と「採用するための対策」を紹介していきます。
この記事で解決できる悩み
- 歯科衛生士の給料・給与の決め方がわかる
- 歯科衛生士からの応募が増える
- 歯科衛生士の退職が減る
歯科衛生士が採用できない1番の理由
歯科衛生士が採用できない理由をプロセス分解すると下記の2つに分けられます。
- 応募が来ない
- 応募が来ても取り逃す
どちらも重要ですが、今回は「応募が来ない」方に特化した内容です。
結論、応募が来ない最大の理由は「給料・給与」です。
内閣府が行った調査によると、16歳から29歳までの男女が仕事をする目的で最も多いのが、「収入を得るため」で約85%を占めます。2位の「仕事を通して達成感や生きがいを得るため」が約15%なので、収入を目的とする人が突出して多いことが分かります。つまり、多くの若者にとって賃金や給与が、仕事を選ぶうえで最も重要な要素だということです。

次に、求人サイト「グッピー」による調査結果をご覧ください。
「歯科衛生士が就職を決める際に重視すること」
2021年 GUPPY調べ(複数回答)※GUPPYホームページより引用
見ての通り、歯科衛生士においても就職先・職場選びで最も重視するのは「給与」です。
※この調査の対象は新卒ですが、中途はさらに給与の比率が高くなります。

グッピーの求人画面は給与が1番目立つようになっています。
歯科衛生士の給料・給与設定は慎重に
歯科経営にとって給与の設定はとても重要です。
歯科医院は、固定費に占める人件費率が高く、安易に給与を上げてしまうと経営に大きなインパクトを与えることになります。しかも、一度給与を上げてしまうと、仮に経営状態が悪化しても、解雇したり、安易に給与額を減らすことはできません。
したがって、給与は慎重に決める必要があります。
最もダメなのは、わかっているのに動かないこと
「重要なのはわかっている。しかし正直いじりたくりたくない」というのが本音ではないでしょうか。お気持ちはわかります。
また、目先の給与を上げるのは誰でもできる小手先のテクニックであり、本質でない!とお思いの方もいるかと思います。それもごもっともです。
しかし、最もいけなのは、わかっているのに動かないことです。なぜなら、周りは動き続けているからです。
世の中の賃金は日々変化しているという事実
世の中の賃金は日々変化しています。そして昨今、経済の発展と年々深刻化する人手不足問題により、賃金は上昇し続けています。
自医院の給与見直しがされないということは、すなわち世の中から後れをとることを意味します。
すると、どうなるか?
新しいスタッフを採用しづらくなるのと、既存スタッフの退職リスクが増えます。
歯科衛生士の給料・給与は「市場価値」で決める

本来、給与の設計は、経営計画と人員計画との整合性を図り行うものです。就業規則・賃金規定、社会保障の負担額や賞与、残業代、有給などとの関連性、人事・評価制度などともセットで考えるべき重要な要素です。
しかし本記事では、そこまでできない、または、したくないという医院向けにシンプルな考え方を提案しています。
採用戦略設計の全体的な解説はこちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
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参考歯科衛生士の採用は難しい?誰も教えてくれない歯科衛生士の採用方法
歯科衛生士の採用は難しい。そう思っていませんか?基本さえ理解してしまえば難しくはありません。
この記事では歯科衛生士採用の全体像と基本的なフレームについて解説しています。
歯科衛生士の採用でお悩みの歯科医院必見です。続きを見る
さて、給与の決め方で、もっとも適切なのはどのような方法でしょうか?
それは「市場価値」で決める方法です。
就職や転職時によく使われる「市場価値」とは?
市場価値とは、文字通り「市場における価値」を意味し、その価値は人材の「需要」と「供給」の関係で決まります。需要が高い状態とは、スキルや経験、実績を持つ人材を求めている会社(医院)が多いということです。
それに対して、そのスキルや経験、実績を持つ人材が少ない場合、需要に対して供給が追いついていないため、その人材は「市場価値」が高いということを意味します。
つまり、今勤めている医院内での価値ではなく、他医院から見て価値がある人材が「市場価値」が高い人材といえます。
今いる歯科衛生士の給与を基準にして給与を設定すると失敗します。
市場価値が高い人とは?市場価値が高い歯科衛生士とは?
では「市場価値」が高い人とは、具体的にどのような人を指すのでしょうか。一般的な就職・転職市場で言われている「市場価値」を構成する要素は、専門性、スキル、経験、実績、再現性の5つです。
歯科衛生士における市場価値が高い人とは?
それは、歯科衛生士であること(=歯科衛生士の資格を保持している)自体です。
理由は以下の3つです。
1.歯科衛生士の求人倍率は20倍あり、20医院で1人の歯科衛生士を取り合っている状態。そうなると市場価値を構成する細かな要素よりも、歯科衛生士であるということ自体の価値が優先される。
2.歯科衛生士の仕事は、医院によって求められるスキルレベルに差が出にくい。
3.他医院での経験や実績が役立つこともあるが、そうでない場合もある。
つまり、歯科衛生士の市場価値は、医院によるバラツキがなくなり、一定になりやすいという傾向にあります。
歯科衛生士自身もそれに気付いています。それであれば自分を最も高く評価してくれるところで働きたいと思うのは自然なことと言えます。
※ちなみに、歯科衛生士であれば誰でも良いと言っているわけではなく、ここでの話はあくでも応募を増やすことに限ったお話です。実際は、その方のスキルや経験、人間性なども加味して、最終的な給与は決定することになるかと思います。
具体的な給料・給与の決め方

Step1.採用競合の求人条件を調べる
採用競合とは、採用活動においてライバルとなる医院のことです。 自医院が採用ターゲットにしている歯科衛生士を奪い合う可能性がある競合他医院のことをいいます。
採用競合になる医院は、採用戦略や地域にもよりますが、自医院から30分圏内にあり歯科衛生士を募集している医院です。
歯科衛生士は、勤務地や路線など働く場所を絞って求人情報を探す傾向が強いからです。
Step2.採用競合の給与を調べ、自医院の給与も含めて一覧化する
グッピーなどの求人サイトで「地域を指定して検索」し、出てきた医院の給与を一覧化します。
・最低でも10医院は調査してください。
・対象が10医院に満たない場合は地域を広げて検索してください。
・常勤と非常勤は分けてください。
・最後に自医院の現状も追加してください。
■サンプル
医院名 | 給与(常勤) |
---|---|
◯◯歯科医院 | 25万円以上 |
◯◯デンタルクリニック | 26万〜30万 |
◯◯歯科 | 26万円 |
◯◯歯科クリニック | 24.5万円から |
□□歯科医院 | 26万円 |
□□デンタルクリニック | 27.5〜32万円 |
□□デンタルオフィス | 23万円以上 |
△△の歯医者 | 24.5万円〜 |
△△歯科医院 | 23万円〜30万円 |
自医院 | 24万円〜 |
Step3.給与の高い順に並び替える
■サンプル
医院名 | 給与(常勤) |
---|---|
□□デンタルクリニック | 27.5〜32万円 |
□□歯科医院 | 26万円 |
◯◯デンタルクリニック | 26万〜30万 |
◯◯歯科 | 26万円 |
◯◯歯科医院 | 25万円以上 |
△△の歯医者 | 24.5万円〜 |
◯◯歯科クリニック | 24.5万円から |
自医院 | 24万円〜 |
□□デンタルオフィス | 23万円以上 |
△△歯科医院 | 23万円〜30万円 |
すると採用競合の中での自医院のポジションが浮かび上がります。
※サンプルでは、自医院のポジションは10医院中8番目です。このままでは給与以外の条件が相当良くない限り、応募は見込めないでしょう。
オススメは地域で2番手

では、給与はどこに設定するのが良いのか?ズバリ言うと、地域で2番手になるように設定することです。
※このサンプルでいうと26万円です。下記表のピンクのライン部分ですので、今よりも2万円上げないといけません。
■サンプル
医院名 | 給与(常勤) |
---|---|
□□デンタルクリニック | 27.5〜32万円 |
□□歯科医院 | 26万円 |
◯◯デンタルクリニック | 26万〜30万 |
◯◯歯科 | 26万円 |
◯◯歯科医院 | 25万円以上 |
△△の歯医者 | 24.5万円〜 |
◯◯歯科クリニック | 24.5万円から |
自医院 | 24万円〜 |
□□デンタルオフィス | 23万円以上 |
△△歯科医院 | 23万円〜30万円 |
2番手を勧めるのは以下の理由です。
- 歯科衛生士の市場価値が一定であるから高い位置にいないと不利になる
- 1位は逆に怪しまれる。高すぎるのは良くない
逆に高すぎるののもよくありません。
歯科衛生士は医院選びの際とても慎重になります。これは私の経験則ではありますが、条件が良すぎる求人は、そうせざるをえない何らかの理由(ネガティブな要素)があると思って敬遠される傾向にあるようです。
計測はしていませんが、そのように言う歯科衛生士が多いのは事実です。
離職を防ぐ効果もあり

この方法は離職を防ぐ効果もあります。
どんな仕事でも、なんらかの理由で仕事を辞めたくなる時はあるものです。
そういう時に、情報収集のつもりで、求人サイトを眺める。そこに今よりもいい条件の求人がある。すると「今の自分は評価されていない。もっと評価してくれる医院に移ろう」と転職を決意する。最初は軽い気持ちだったのに、決断してしまう。よくある流れです。
そのときに、市場価値を基準に条件設定しておけば、今の職場でもっとがんばろうと思いとどまらせる可能性が高まります。
本質的な解決にはならないかもしれませんが、院長が市場価値を把握しその上で意思決定しているというのが一つの安心感に繋がることになるのは間違いありません。また、そこから話し合ってまた気持ちを引き上げることも可能になります。
まとめ
- 歯科衛生士の応募が来ない理由の1番は「給与」
- 歯科衛生士の給与設定は慎重に行う必要がある
- しかし、最もダメなのは、わかっているのに動かないこと
- なぜなら、世の中は動いているから。動かないでいると取り残される
- 歯科衛生士の給与は市場価値で決める
- 歯科衛生士の市場価値は、歯科衛生士であることそのもので、医院によって差をつけにくい
- 具体的な給与額は採用競合との比較で決める
- 地域で2番手に設定するのがベスト
- 市場価値を基準とした給与設定は離職を防ぐ効果もある
今回は、歯科衛生士の採用には給与の設定が大事という説明をしてきました。
しかし、お気付きだとは思いますが、給与はあくまで募集条件の1つの要素にしかすぎません。実際には給与だけではなく、その他の条件との組み合わせによって、応募動機が形成されます。休みや時間、福利厚生など、その他の条件との掛け合わせによる複雑な設定が必要となります。
給与設定において特に院長を悩ませるのは、既存スタッフとの関係性です。これは歯科衛生士同士の調整だけにとどまらず、歯科助手・受付や歯科医師ともバランスも取らないといけないため、非常に繊細な作業でもあります。
デンタルHR総研では「こんなサポート」ができます。
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