歯科衛生士の勤務時間は長い?労働時間と1日の流れについて紹介

2024.09.03

歯科衛生士は、歯科医師と協力しながら患者さんの口腔衛生の維持・向上のために働く専門職です。近年、歯科衛生士の役割は多様化しており、さまざまな職場環境で活躍しています。しかし、歯科衛生士の勤務時間は長いというイメージを持つ方も少なくありません。

本記事では、歯科衛生士の一般的な勤務時間と、働き方改革による変化、そして1日の仕事の流れについて詳しく解説します。歯科衛生士の仕事に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

歯科衛生士の一般的な勤務時間は?

歯科衛生士の一般的な勤務時間は、多くの場合、1日8時間程度です。これは、労働基準法で定められた法定労働時間に準拠しています。ただし、歯科医院によって、シフト制を採用している場合もあれば、固定勤務の場合もあるでしょう。社員やアルバイトなど、雇用契約によっても勤務時間は異なります。

歯科衛生士の勤務時間は、歯科医院の運営方針や職場環境によって異なるため、就職先を選ぶ際は、勤務時間についてよく確認することが大切です。

法定労働時間とは?

法定労働時間は、労働基準法で定められた労働時間の上限のことを指します。一般的な労働者の場合、1日8時間、週40時間が法定労働時間となっています。

歯科衛生士も、この法定労働時間の規定が適用されます。歯科医院の就業規則や雇用契約書には、この法定労働時間に基づいた勤務時間が明記されているはずです。

歯科衛生士の勤務時間を考える上で、法定労働時間の理解は欠かせません。自分の勤務先の就業規則などをしっかりと確認し、適切な労働時間管理がなされているかチェックしましょう。

忙しい時期は残業があることも

労働基準法では、一定の条件の下で法定労働時間を超えて働くことが認められています。これを「時間外労働」や「残業」と呼びます。

歯科衛生士の勤務時間は基本的に法定労働時間内に収まるように設定されていますが、繁忙期や予約が集中する時期には残業が発生することもあるでしょう。特に、年末年始やゴールデンウィークなどの休暇前後は、患者さんの予約が集中しやすく、残業が必要になるケースが多いです。

しかし、近年は働き方改革の影響もあり、歯科医院でも労働時間の適正化が進められています。計画的なスケジューリングや業務の効率化によって、残業を減らす取り組みが行われているところも増えてきました。

歯科衛生士の残業の有無や頻度は、医院の方針や職場環境によって異なりますが、忙しい時期には残業が発生することも理解しておきましょう。

働き方改革によって勤務時間は変化している

近年、日本では働き方改革が推進され、長時間労働の是正や柔軟な働き方の実現に向けた取り組みが行われています。歯科医療業界でも、歯科衛生士の勤務時間や働き方に変化が見られます。

  • 労働時間の短縮化の取り組み
  • ワークライフバランスを重視した勤務体制
  • フリーランスなど多様な働き方の選択肢

以上のポイントを詳しく見ていきましょう。

労働時間の短縮化の取り組み

近年、政府主導の「働き方改革」が推進され、歯科医療業界でも労働時間の短縮化に向けた取り組みが行われています。具体的には以下のような施策が挙げられます。

 

  • 時間外労働の上限規制の遵守
  • 休日・有給休暇取得の促進
  • 勤務間インターバル制度の導入
  • 業務の効率化・省力化の推進

 

各歯科医院では、スタッフのワークライフバランスを考慮しながら、シフト管理の最適化や業務分担の見直しなどを行っていることが多いです。働きやすい職場環境を整備することは、歯科衛生士の離職防止やモチベーション向上にもつながります。患者さんへのより良い歯科医療サービスの提供のためにも、労働時間の適正化は重要な課題と言えるでしょう。

ワークライフバランスを重視した勤務体制

歯科衛生士の働き方も、ワークライフバランスを重視する方向へシフトしつつあります。具体的な取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。

 

  • 時間外労働の削減
  • 有給休暇の取得促進
  • 育児・介護休業制度の整備
  • フレックスタイム制の導入

 

業務の効率化や人員配置の適正化により残業時間を減らしたり、コアタイムを設けつつ、始業・終業時刻を柔軟に調整可能にしたりするなど、働きやすい職場環境を整えている歯科医院も多くなっています。

こうした環境を整えることで、歯科衛生士がプライベートの時間も大切にしながら、モチベーション高く働き続けられるようサポートする動きが広がりつつあるのです。

フリーランスなど多様な働き方の選択肢

近年、歯科衛生士の働き方は多様化しつつあります。その一つが、フリーランスとして活動する歯科衛生士の増加です。フリーランスの利点としては、以下のようなものが挙げられます。

 

  • 自分の都合に合わせてシフトを組める
  • 複数の歯科医院で経験を積める
  • 報酬単価が高い傾向にある

 

一方で、仕事が不定期になりやすく収入の不安定な点や、社会保険などに個人で加入する必要がある点など、フリーランスならではの課題もあります。

このように、メリット・デメリットを理解した上で、自身のライフスタイルに合った働き方を選択することが重要です。

 

フリーランスでの働き方に興味のある方は、以下の記事もぜひご覧ください。

フリーランスの歯科衛生士とは?採用するメリットや給与事情を紹介

歯科医院による勤務時間の違い

歯科衛生士の勤務時間は、勤務先の歯科医院によって異なります。

 

  • 開業形態や規模による差異
  • 立地や患者数による影響
  • 院長の方針と職場環境

 

それぞれのポイントを見ていきましょう。

開業形態や規模による差異

歯科医院の開業形態や規模によって、歯科衛生士の勤務時間は異なります。

例えば、個人医院は院長の裁量で勤務時間を調整しやすい傾向にあります。

法人医院では、複数の歯科衛生士が交代制やシフト制で働くことが多いです。大規模な医院ほど、専門的な業務分担が進み、勤務時間が長くなりがちです。一方で、小規模な医院では歯科衛生士一人ひとりの担当業務が広範になるため、勤務時間が長引く場合もあるでしょう。

歯科医院の開業形態や規模によって、歯科衛生士の勤務時間には一定の差異が生じているのが実情です。

立地や患者数による影響

歯科医院の立地や患者数によっても、歯科衛生士の勤務時間は影響を受けます。

例えば、都心部の歯科医院の場合は、患者数が多く予約が詰まっている傾向にあり、勤務時間が長くなりがちです。

郊外や地方の歯科医院の場合は、患者数は比較的少なめで、ゆとりを持った勤務時間の設定が可能であることが多いです。

このように、歯科医院の立地や1日の患者数の違いによって、歯科衛生士の勤務時間は大きく変わってきます。都心部の歯科医院では残業が多くなる一方、郊外や地方では比較的定時で仕事が終わることも珍しくありません。

院長の方針と職場環境

歯科衛生士の勤務時間は、院長の経営方針や職場環境によっても大きく左右されます。

例えば、院長が働きやすさ重視を重視している場合、ワークライフバランスが考慮された適正な勤務時間であることが多いです。逆に、人員配置を軽視している院長ならば、長時間労働のリスクを孕んでいる可能性があります。

このように、歯科衛生士の労働時間は、院長の考え方と職場の状況次第で大きく異なります。働く環境を見極めることが、自分に合った勤務条件の歯科医院を選ぶ上で重要と言えるでしょう。

歯科衛生士の1日の仕事の流れ

歯科衛生士の1日の仕事の流れは、以下のようになります。

 

  • 始業前の準備
  • 診療補助業務
  • 予防処置と口腔衛生指導
  • 器具の滅菌と診療室の清掃
  • カルテ記入などの事務作業

 

それぞれの業務内容について見ていきましょう。

始業前の準備

始業前の準備には、まず手指の衛生管理が欠かせません。手洗いや手指消毒を徹底します。次にユニフォームに着替え、清潔で動きやすい服装を整えます。

器具の準備では、使用する器具の点検とセッティング、不足物品の補充などを行います。

診療室の環境整備として、診療台やチェアの拭き掃除、コップ・エプロンなどの備品チェックをすることもあるでしょう。

このように、始業30分前から準備を開始し、衛生管理を徹底した上で診療開始に臨むのが一般的です。朝のミーティングを行う歯科医院もあるでしょう。円滑に1日の診療がスタートできるよう、歯科衛生士が率先して始業前の準備を整えていきます。

診療補助業務

歯科衛生士の診療補助業務は、主に以下のような内容です。

 

  • 診療前の準備(器具のセッティング、患者さんの誘導など)
  • 診療中の器具の受け渡し
  • 歯科医師の指示に従った処置の補助
  • 使用済み器具の回収と洗浄・滅菌
  • 治療後の後片付けと診療台の清掃

 

このように、歯科衛生士は診療前から診療後まで、一連の流れの中で歯科医師の診療をサポートしています。円滑で効率的な診療が行えるよう、器具の取り扱いや患者さんとのコミュニケーションにも細心の注意を払っています。

予防処置と口腔衛生指導

歯科衛生士の一日の中で、予防処置と口腔衛生指導は重要な業務の一つです。具体的には以下のような内容を行います。

  • PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)

歯科医師の指示のもと、専門的な器具を用いて歯の汚れを除去

  • フッ化物塗布

虫歯予防のために、フッ素を歯の表面に塗布

  • 歯のクリーニング指導

患者さんに対して、正しいブラッシング方法をレクチャー

  • 食事指導

虫歯や歯周病予防のために、適切な食生活についてアドバイス

 

このように、予防や指導に関する業務は、歯科衛生士の重要な役割の一つです。患者さんお一人おひとりに合わせたオーダーメイドの指導を行うことで、口腔内の健康維持・増進に貢献しています。

器具の滅菌と診療室の清掃

歯科診療で使用した器具類は、患者さんごとに交換・滅菌処理が必要不可欠です。歯科衛生士は、使用済みの器具を回収し、専用の機器で洗浄・滅菌を行います。器具の種類によって、オートクレーブや薬液浸漬などの方法を使い分けます。

また、診療室内の環境整備として、ユニットや周辺機器、床などの清掃・消毒作業も歯科衛生士の重要な業務です。患者さんを迎える清潔な空間を維持するため、診療の合間を縫って手際よく行う必要があります。1日の終わりには、翌日に備えた準備と確認作業もあわせて行います。

カルテ記入などの事務作業

歯科衛生士の仕事には、カルテ記入などの事務作業も含まれます。主に以下のような事務作業が挙げられます。

  • カルテへの処置内容の記入

患者への処置内容や使用器具、薬剤などを詳細にカルテに記録

  • レセプト(診療報酬明細書)作成補助

保険診療の内容を正しくレセプトに記載。歯科医院の経営に直結する重要業務

  • 患者データの入力・管理

カルテの内容をPCに入力。予約管理や統計資料作成にも活用

  • 物品の在庫管理・発注

歯科材料や薬剤の在庫をチェックし、適切なタイミングで発注手配

 

これらの事務作業には正確性と効率性が求められます。特にカルテは法的にも重要な書類のため、記入ミスが無いよう細心の注意を払う必要があります。

勤務の最後には、スタッフ間の引き継ぎや振り返りのためのミーティングが行われることもあります。これにより、情報共有を図り、より良い診療につなげていくのです。

まとめ

歯科衛生士の勤務時間は法定労働時間を基本としつつも、歯科医院の規模や方針によって差異があります。近年は働き方改革の影響で労働時間の短縮化やワークライフバランスを重視する動きが広がっています。

「現在歯科衛生士として働いているが、勤務時間や残業時間が多くて悩んでいる」「ライフスタイルに合った働き方をしたい」とお考えの方は、事前に医院の方針などを調べてから勤務先を選びましょう。自身のライフスタイルに合わせた働き方を選択し、長く働き続けられる環境づくりをすることが大切です。

お役立ち情報
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