歯科医院の給与制度を見直すには?皆勤手当・退職金・インセンティブに頼らない考え
2026.08.12
歯科医院の給与制度を見直し、採用や定着につなげたいと考えている院長・経営者の方も多いでしょう。これまで一般的だった皆勤手当や退職金、賞与なども、働く人の価値観が変化した現在では、必ずしも魅力的な制度とは限りません。
この記事では、従来の給与制度の問題点や、これからの歯科医院に求められる給与体系について解説します。
日本国内における評価制度の変化
企業の人事・評価制度や給与制度は、社会環境や働く人の価値観に合わせて変化してきました。たとえば、スキルや勤務態度、目標達成率を項目ごとに点数化する評価方法や、行動特性を見るコンピテンシー評価、上司・部下・同僚など複数の人が評価する360度評価などがあります。
2000年代初頭には、外資系企業で採用されていた「成果主義」による人事評価が注目されました。しかし、成果主義を取り入れた企業のすべてがうまくいったわけではなく、「日本には馴染まない」という見方も広がり、ブームは数年で退潮しています。
評価制度は一つの方法が長く正解であり続けるものではなく、時代や働く人に合わせて変化していくものだと考える必要があります。
歯科医院の給与制度に見られる成果主義の考え方
企業の評価制度が変化してきた一方で、歯科医院の給与体系には、現在も成果主義の考え方が残っているケースがあります。代表的な制度は以下のとおりです。
- 皆勤・精勤手当
- 賞与制度
- インセンティブ制度
- 試用期間の給与減
- 社会保険の加入日をずらす
- 退職金制度
皆勤・精勤手当は遅刻や欠勤がないことへの報酬、賞与やインセンティブは努力や成果への報酬という考え方です。
条件を達成したスタッフに追加の報酬を与えることで行動を促す仕組みですが、現代の雇用形態やスタッフのニーズを踏まえると、こうした制度が現在も適しているのかを見直す必要があります。
時代遅れな「ニンジンぶら下げ型マネジメント」の問題点

報酬や罰によって従業員の行動をコントロールする方法は、「carrot and stick(ニンジンと棒)」アプローチと呼ばれています。
皆勤手当や賞与、インセンティブなど、報酬を与えることで従業員の行動や意欲を引き出そうとする方法も、この「ニンジンぶら下げ型マネジメント」といえるでしょう。
こうした仕組みでは、望ましい成果を出した場合には金銭や昇進などの報酬を与え、目標を達成できなかった場合には手当を支給しない、昇給を遅らせるといった方法で従業員の行動を促します。
以下では、「精皆勤手当」「賞与」「試用期間の減給」といった制度が抱える問題点を紹介します。
精皆勤手当
皆勤・精勤手当は、遅刻や欠勤をせずに勤務したスタッフに対して支給する手当です。しかし、労働契約どおりに欠勤せず勤務することは本来当然のことであり、その行動に対して追加で手当を支給する必要はないという考え方も広がっています。
労務行政研究所の「諸手当の支給実態調査2018年」によると、企業における精皆勤手当の導入率は1.9%でした。2005年の同調査では10.0%だったため、大きく減少していることがわかります。
このように、精皆勤手当を廃止する企業は増えています。無遅刻・無欠勤に対して追加の報酬を与える仕組みを続けるのではなく、現在の働き方やスタッフのニーズに合った給与制度へ見直すことが重要です。
退職金制度
退職金制度も、従来の働き方を前提につくられた制度の一つです。終身雇用を前提として長期間一つの会社で働く時代から働き方が変化し、歯科業界でも転職を前提として就職する若い人が増えています。
退職金は、長く勤務しなければ受け取れません。そのため、将来受け取れる退職金よりも、現在の手取り額が高いことに魅力を感じる人もいます。
将来の退職金を準備するよりも、現在働いているスタッフの処遇改善や教育などにコストを充てることをおすすめします。
そうすることで、スタッフのやりがいが高まり、長期的には売上アップやコストダウンにつながることも期待できます。
賞与
賞与についても、まとまった金額を年に数回支給する従来の形だけでなく、毎月の給与を高く設定する方法を考える必要があります。
年収がすべて420万円となる場合でも、給与の配分方法によって受け取る印象は異なります。たとえば、以下の3パターンがあります。
A:月給30万円・賞与年60万円
B:月給32万円・賞与年36万円
C:月給35万円・賞与なし
いずれも年収は同じですが、このなかでは月給が最も高いCの給与パターンが人気です。
以前の日本では、基本給を低めに設定し、賞与や退職金、皆勤手当などを追加する給与体系が主流でした。しかし、働く人のニーズが変化している現在では、賞与としてまとめて支給するよりも、毎月受け取れる給与を高くするという考え方も重要です。
試用期間の減給
新人を採用する際、試用期間中だけ給与を減額したり、時給制にしたりする歯科医院もあります。しかし、このような制度は「きちんと働けるようになれば通常の報酬を支払う」という成果報酬的な姿勢と捉えることもできます。
スタッフ側からすれば、入職時点では十分に期待されていない、信用されていないと感じる可能性があります。そのような状態で高いモチベーションを保ちながら仕事を始めることは簡単ではありません。
また、試用期間中の減給や社会保険への未加入は、スタッフが仕事に責任を持って取り組みにくくなり、結果として早期退職につながる可能性もあります。医院側がさらに採用時の条件を厳しくすれば、悪循環に陥りかねません。
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歯科医院に成果主義を導入すべきではない理由
歯科医院では、売上や患者数などの目標を設定し、達成度に応じて報酬を与える成果主義が必ずしも適しているとは限りません。
その理由は、歯科医院のスタッフ自身が患者様を選んだり、自分一人の力だけで患者数や売上、症例数を増やしたりすることが難しいためです。
自分では十分にコントロールできない数字を評価基準にされれば、スタッフにとって不満の原因となる可能性があります。営業職のように個人の行動と成果が結びつきやすい仕事ではインセンティブが効果を発揮することもありますが、歯科医院では職種の特徴に合わせて給与制度を考えることが重要です。
成果主義のインセンティブ制度を続けるとどうなる?
売上や患者数などを基準としたインセンティブ制度を続けると、スタッフが患者様よりも自分の報酬を優先して働く可能性があります。
本来、患者様のために行うべき仕事であっても、報酬につながるかどうかを基準に考えるようになれば、患者様の満足度を損ねかねません。
また、患者数や売上はスタッフ自身の努力だけで決められるものではないため、目標を達成できなかったスタッフの不満にもつながります。
売上を伸ばす目的で導入したインセンティブ制度が、患者様からの信頼を失う原因となり、結果的に医院の業績へ悪影響を与える可能性もあります。
転職者から選ばれる歯科医院の給与制度とは

転職者から選ばれる歯科医院を目指すなら、成果に応じて報酬を与える給与体系ではなく、スタッフへの信頼と期待を前提とした給与制度を検討することが大切です。
その方法の一つとして、年俸制が挙げられます。年俸制では、期待や成果にかかわらず、あらかじめ決めた報酬を支払います。
試用期間中の給与を減額したり、成果に応じてインセンティブを支給したりするのではなく、最初から一定の報酬を支払うことで、スタッフも期待に応えようと努力する姿勢を持ちやすくなります。
歯科医院の給与制度は「信頼と期待」を軸に設計する
給与制度を考えるうえでは、報酬や罰によってスタッフの行動をコントロールするのではなく、「信頼と期待」を前提にすることが重要です。
試用期間中の減給や社会保険への未加入といった条件は、スタッフに対する期待値が低い、あるいは信用していないという姿勢として伝わる可能性があります。そのような環境では、スタッフがモチベーションを維持しながら働くことも難しくなります。
一方、最初からスタッフの活躍を期待して給与制度を設計することで、モチベーションを高め、組織への責任感を強めることにつながります。
まとめ|採用される歯科医院になるため給与体系を見直そう
歯科医院の給与制度には、皆勤・精勤手当や賞与、退職金、インセンティブなど、従来から使われてきた仕組みが残っていることがあります。しかし、雇用形態や働く人の価値観が変化するなかで、従来の制度が現在の求職者にとって魅力的とは限りません。
採用される歯科医院を目指すためにも、報酬によってスタッフの行動をコントロールする仕組みから、信頼と期待を前提とした給与体系へ見直していきましょう。
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