歯科医院の採用で給与を上げるのは逆効果?応募が来ないときに見直すべきポイント
2026.07.08
歯科衛生士の応募が集まらない場合、周辺の歯科医院より給与を高く設定しようと考える院長は少なくありません。給与は勤務時間や休日より変更しやすいため、すぐに取り組める採用対策に見えるでしょう。しかし、給与を上げたからといって、必ずしも応募が増えるとは限りません。採用条件を変更する前に、求職者が何を重視しているのかを考える必要があります。この記事では、安易に給与を上げるべきではない理由や、給与アップによって生じるマイナス効果、給与より先に見直したい就業条件などについて解説します。
「応募が来ない」という理由だけで給与を上げるのはキケン!
歯科医院の求人に応募が来ないとき、真っ先に給与を引き上げるのは得策とはいえません。
勤務時間を短くしたり、休日を増やしたりするには、診療体制や既存スタッフの勤務状況を含めた調整が必要です。一方、給与額は求人票の数字を変更すればよいため、比較的手をつけやすい条件といえます。
しかし、応募が少ない原因が給与にあるとは限りません。求職者が実際に重視している条件とずれていれば、給与を上げても根本的な解決にはならない可能性があります。むしろ、集まる人材の傾向が変わったり、求職者から不信感を持たれたりすることもあるため、慎重に判断することが重要です。
応募が来ないときに給与を上げるべきではない理由

給与を上げるべきではない主な理由は、次の3つです。
- 若い世代は給与よりも休み・時間を重視するため
- 金銭目当ての応募者が集まりやすくなるため
- 高すぎる給与は求職者に不信感を与えるため
給与は採用条件の一つですが、単純に高くすれば応募が増えるとは限りません。
それぞれの理由について、詳しく解説します。
若い世代は給与よりも休み・時間を重視するため
現在の若い世代は、お金よりも「休み」や「時間」を重視する傾向があります。
洋服も高価なものではなく、手頃な価格の商品で十分だと考える人が増えるなど、物質的な豊かさに対する欲求は以前より低下しています。また、未婚者が親と同居する割合も高くなっており、給与を最優先にしなくても生活に困りにくい環境があります。
歯科衛生士は初任給がもともと比較的高いため、給与を少し上げても大きな魅力にならないことがあります。例えば、月給が27万円から30万円になったとしても、生活の質や仕事への満足感が大きく変わるとは限りません。
給与額の差よりも、休みを確保できるか、無理のない時間で働けるかといった条件のほうが、応募先を選ぶ際の重要な判断材料になりやすいのです。
金銭目当ての応募者が集まりやすくなるため
給与を高く設定すると、「働く目的はお金を稼ぐこと」と考える応募者を引きつける恐れがあります。
給与を第一の基準として応募する人は、患者様への貢献や医院の方針よりも、自分が受け取れる金銭的な利益を優先する可能性があります。そのため、院長が求めている人材とは異なる層からの応募が増えることも考えられます。
また、お金を主な理由として入職したスタッフは、さらに高い給与を提示する医院が見つかれば、金銭的な理由で離職する可能性があります。
応募者を集めることだけに成功しても、早期離職が続けば安定した診療体制はつくれません。既存スタッフとの関係や職場の雰囲気にも悪影響を及ぼす可能性があるため、給与だけで人材を引きつけようとする採用方法には注意が必要です。
高すぎる給与は求職者に不信感を与えるため
周辺の歯科医院と比べて給与が異常に高い場合、求職者から警戒されることがあります。
求人票を見た求職者が、「人が集まらないから給与を高くしているのではないか」「高くしなければならない事情があるのではないか」と疑う可能性があるためです。
給与の高さが魅力として受け取られるとは限らず、場合によっては売れ残った商品を値下げしているような印象を与えてしまいます。条件がよすぎることで、かえって「何か理由があるに違いない」と思われるのです。
特に歯科業界では、求人情報を慎重に確認する求職者も少なくありません。採用に苦戦している状況を給与で隠しているように見えれば、応募を増やすどころか、応募者の減少につながることもあります。
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給与アップによって引き起こされるマイナス効果
給与アップによって引き起こされる主なマイナス効果は、次の2つです。
- アンダーマイニング効果
- 高額報酬の重圧によるパフォーマンス低下
給与やボーナスを増やせば、必ずしも働く意欲や仕事の成果が高まるとは限りません。それぞれのマイナス効果について、詳しく解説します。
アンダーマイニング効果
アンダーマイニング効果とは、自分の興味ややりがいによって行動していた人に外から報酬を与えることで、かえって意欲が低下する現象です。
患者様の役に立ちたい、歯科衛生士として成長したいと考えて働いていた人も、給与やボーナスなどの金銭的な報酬を強く意識するようになると、働く理由が「報酬を得るため」に変わってしまうことがあります。
その結果、報酬がなければ積極的に取り組まなくなったり、仕事そのものへの関心が薄れたりする可能性があります。
高額報酬の重圧によるパフォーマンス低下
高額な報酬は、仕事への意欲を高めるどころか、重圧となってパフォーマンスを低下させることがあります。
給与が高くなるほど、「報酬に見合った成果を出さなければならない」「失敗してはいけない」という意識が強くなる可能性があるためです。過度な緊張やプレッシャーが生まれれば、普段なら問題なくできる業務でも、本来の能力を発揮しにくくなります。
現代の求職者は「物の豊かさ」より「心の豊かさ」を重視している

働く人が仕事に求めるものは、時代とともに変化しています。
厚生労働省の「平成20年版 労働経済の分析」によると、1980年には「心の豊かさ」を重視する人が42.2%、「物の豊かさ」を重視する人が39.8%で、その差はわずか2.4%でした。しかし、2007年には「心の豊かさ」が62.6%、「物の豊かさ」が28.6%となり、差は34%にまで広がっています。
つまり、給与や所有物などの物質的な豊かさよりも、自分らしく働けることや、時間にゆとりを持てることを重視する人が増えているということです。
歯科医院が給与より先に見直すべき就業条件
歯科衛生士からの応募が来ない場合は、給与を上げる前に就業条件全体を確認しましょう。
求職者は給与だけで応募先を決めているわけではありません。休日数や勤務時間、職場の雰囲気など、複数の条件を比較したうえで、自分に合う歯科医院を選んでいます。
給与以外の条件に働きにくさを感じる部分が残っていれば、給与を上げても応募につながらない可能性があります。まずは、求職者が安心して長く働ける条件になっているかを見直し、その内容を求人情報で正しく伝えることが大切です。
就業条件を見直す際の詳しいポイントは、以下の記事でも解説しています。
歯科医院の採用は就業条件が9割!?応募者を増やすために見直すべきポイントとは
休日や勤務時間を見直す
現在の若い世代は、給与の高さよりも休日や勤務時間を重視する傾向があります。そのため、応募を増やすには、まず無理なく働ける条件になっているかを確認する必要があります。
休日が少なかったり、勤務終了時間が遅かったりする求人は、給与が高くても選ばれにくい可能性があります。求職者にとっては、仕事だけでなく、家族や友人と過ごす時間、自分のために使える時間も重要だからです。
給与額だけを見るのではなく、生活との両立が可能な働き方になっているかを確認しましょう。
働きやすい職場環境を整える
優秀な人材を採用するには、職場環境を含めて総合的に考えることが重要です。
給与が高くても、院内の雰囲気が悪かったり、スタッフが安心して働けなかったりすれば、応募や長期的な定着にはつながりにくくなります。求職者は入職後の生活を想像しながら求人を確認するため、継続して働ける環境であるかどうかも重視しています。
採用条件を見直す際は、新しく入るスタッフだけでなく、既存スタッフにとっても働きやすい環境になっているかを考える必要があります。
スタッフが落ち着いて働けるか、医院の方針に納得して仕事に取り組めるかなど、職場全体の状態を確認しましょう。
求職者に不安を与えない求人情報にする
求人情報では、高い給与だけを強く打ち出すのではなく、求職者が安心して応募できる条件を伝えることが大切です。
相場から大きく離れた給与額を掲載することで求職者に魅力を感じてもらえる、とは限りません。「なぜこれほど高いのか」「人が定着しない医院なのではないか」といった疑念を抱かれる可能性があります。
給与だけで人を集めようとしているように見せないためにも、休日や勤務時間、職場環境などを含め、医院での働き方がわかる情報を掲載しましょう。
どのような環境で、どのような時間の使い方ができるのかを具体的に伝えることで、応募に対する不安を抑えやすくなります。
給与を上げるなら「最後の調整」として考える
給与の見直し自体が、すべて間違っているわけではありません。ただし、応募が来ないときに最初に行う対策ではなく、就業条件全体を整えた後の「最後の調整」として考えることが重要です。
まずは、休日数や勤務時間が求職者の希望とかけ離れていないか、安心して働ける職場環境になっているかを確認しましょう。そのうえで、給与額にも見直すべき点がある場合に調整します。
採用後の定着や医院全体への影響まで考え、給与・休日・時間・職場環境のバランスを整えることが大切です。
まとめ|歯科医院の採用では給与アップより先に働き方を見直そう
歯科衛生士からの応募が来ないからといって、すぐに給与を上げるのは得策ではありません。現在の求職者は、給与などの物質的な豊かさだけでなく、休日や時間、安心して働ける環境といった心の豊かさを重視しています。
高すぎる給与は、金銭を第一に考える応募者を集めたり、求職者に不信感を与えたりすることもあります。また、報酬を上げることが、働く意欲や仕事の成果を必ず高めるとは限りません。
採用条件を改善する際は、まず休日・勤務時間・職場環境を含めた働き方全体を見直しましょう。給与の変更は、それらを整えた後に必要性を判断することが重要です。
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