【医院向け】面接でこれを聞いてはダメ!不適切な質問例付き。〜歯科衛生士・歯科助手・歯科医師共通〜
2022.06.19こんにちは、土屋です。
「彼氏はいるの?」「結婚・出産の予定は?」採用面接でこのような質問はしていませんか?
採用のミスマッチを減らしたい、早期退職が怖い、また、面接という雰囲気からくる緊張を少しでも和らげたいということから、次に示すような質問をする場合があります。
しかし、採用面接の際、または医院見学の際、求職者に対して「聞いてはいけないこと」があります。良かれと思ってした質問が「法律違反」「人権侵害」や「就職差別」になってしまう可能性もあるので要注意です。今回は歯科医院の理事長・院長や採用担当者が知っておくべき、法的・倫理的に聞いてはいけない質問について解説します。
法律違反になる! 見学・面接で聞いてはいけない6項目
医院が求職者と面接する際、または医院見学の際、応募者の「基本的人権を尊重すること」と「応募者の適性と能力のみを選考の基準とすること」の2点を意識する必要があります。職業安定法では、「必要な範囲を超える求職者の個人情報を同意なしに収集してはならない」と定められており、面接時に不適切な質問をすると違法となってしまう可能性も発生します。
厚生労働省の「面接で聞くべきではない項目」を参考に、見学・面接で聞いてはいけない項目を下記の6個にまとめました。
(1)本人に責任のない事項を聞いてはいけない
面接時、本人に責任のない事項の把握は避ける必要があります。
そういった事情を選考資料とすると特定の応募者に不当な不利益が発生する可能性があるためです。
① 本籍・出生地に関する質問
- あなたの出身地・本籍地はどこですか。
- あなたのお父さんやお母さんの出身地はどこですか。
- 生まれてから、ずっと現住所に住んでいるのですか。
- ここに来るまでどこにいましたか?
- 「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることもしてはいけません。
⇒ なぜこのような質問はいけないのか?
本籍を質問することは、結果的に就職差別につながるおそれがあり、公正な採用選考を妨げる原因になるからです。
② 住居とその環境に関する質問
- ○○町の△△はどのへんですか。
- あなたのおうちは国道○○号線(○○駅)のどちら側ですか。
- 家の付近の目印となるのは何ですか。近くに○○がありますよね
③ 家族構成や家族の職業・地位・収入に関する質問
- 同居している人はいますか?
- あなたの家の家業は何ですか。
- 旦那さんの仕事は?どこに勤めてるのですか?共働きですか?
- 家族の収入はどれくらいですか。
- 学費は誰が出しましたか。
- 家庭はどんな雰囲気ですか。
- お父さん(お母さん)がいないようですが、どうしたのですか。
- お父さん(お母さん)は病死ですか。死因(病名)は何ですか。
④ 資産に関する質問
- 家は一戸建てですか?マンションですか?
- 持ち家ですか、賃貸住宅ですか。
- 不動産(田畑、山林、土地)はどれくらいありますか。
⇒ なぜこのような質問はいけないのか? ◆
応募者の適性・能力を中心とした選考を行うのではなく、本人の責任でないことがらで判断しようとしていることです。このことは、前近代的な身分制により形成された部落差別により、教育や就職の機会均等の権利を侵害されてきた人たちを排除することにもつながるものです。住宅環境や家庭環境の状況を聞くことは、地域の生活水準等を判断することになり、主観的判断に属する事柄です。これらは本人の努力によって解決できない問題を採否決定の基準とすることになり、そこに予断と偏見が働くおそれがあります。
(2)本来自由であるべき事項を聞いてはいけない
⑤ 思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関する質問
- 信条としている言葉は何ですか。
- 宗教を信じていますか?何の宗教を信じていますか?
- 家族は、何を信仰していますか。
- 神や仏を信じる方ですか。
- 何党を支持していますか?先日の選挙では、誰に投票しましたか?ご家族の支持政党は?
- 尊敬する人物は?
- 今の社会をどう思いますか。
- 将来、どんな人になりたいと思いますか。
- どんな本を愛読していますか。
- 購読新聞・雑誌・愛読書などは?
⇒ なぜこのような質問はいけないのか? ◆
思想・信条や宗教、支持する政党、人生観などは、信教の自由、思想・信条の自由など、憲法で保障されている個人の自由権に属することがらです。それを採用選考に持ち込むことは、基本的人権を侵すことであり、厳に慎むべきことです。思想・信条、宗教などについて直接質問する場合のほか、形を変えた質問を行い、これらのことを把握しようとする医院がありますが、行うべきではありません。
(3)男女雇用機会均等法に抵触する質問は聞いてはいけない
⑥ 男女雇用機会均等法に抵触する質問
- 結婚、出産しても働き続けられますか。
- 何歳ぐらいまで働けますか。
- 今、つきあっている人はいますか。
- 結婚の予定はありますか。
⇒ なぜこのような質問はいけないのか?
女性に限定しての質問は、男女雇用機会均等法の趣旨に違反する採用選考につながります。
面接で聞いてはいけない質問をしてしまったときに医院が負うリスク
もし、面接時に聞いてはいけない質問をしてしまったら、医院側はどういったリスクを負うのでしょうか?
(1)違法行為とされる可能性がある
職業安定法は、「採用選考の際、必要な範囲を超える個人情報を同意なく収集してはならない」旨を定めており、違反すると厚生労働大臣から改善命令がなされ、当該改善命令にも違反すると「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑」が適用されます。
面接時に、医院側が求職者の本籍地や家族関係、思想信条や宗教、支持政党などの情報を集めると、職業安定法違反となってしまいます。
面接を受けた応募者が不快に思って通報したら、指導や改善命令が出される可能性がありますし、命令に従わなければその旨の公表をされたり書類送検されたりするおそれもあります。
(2)医院のイメージダウンにつながることも
今は多くの求職者がインターネットで情報収集をしています。
面接で不快な質問をされた求職者が、口コミサイトやSNSなどに「○○医院の面接でこのようなことを聞かれた」などと書き込むと、医院のイメージダウンに繋がります。
評判が悪くなって応募する人が減ったり、現在のスタッフのモチベーションが下がってしまったりする可能性がありますし、取引先からの信用を失うリスクもあります。
面接の際には、仕事や能力と無関係な個人的な質問はすべきでありません。
たとえ、「場を和ませるため」「一般的な話題」と思って質問した内容でも、個人的な内容で応募者が不快に感じたら問題が発生する可能性があります。
理事長・院長、採用担当は、「聞いても良いこと」「聞くべきではないこと」についてしっかり理解しておきましょう。
面接で聞いても問題ない質問や、確認すべきこと
採用面接の際、以下のようなことであれば聞いても問題ありませんし、むしろ聞くべきものもあります。
(1)面接で聞いても問題ない質問
① これまでの職歴、経歴、実績など
これまでの職歴や経歴、実績、得意なことなどは採用選考に当たって重要な情報となるので、聞いても問題ありません。
② 応募した動機や就職後にやりたいこと、目指したいこと
志望動機や入職後に携わりたい業務内容、取得したいスキル、今後目指すべき仕事人としてのイメージなどについては、業務に関することなので質問しても問題ありません。
③ 自医院へのイメージ
「当院に対してどういったイメージを持っているか?」という質問も、志望動機ややりたいことと関係するので聞いてもかまいません。
まとめ
歯科衛生士、歯科助手、歯科医師、また、新卒、中途、いずれのケースでも、採用活動の際には「適切な面接」を行うべきです。法律上聞くべきではないことがいくつかありますが、反対に聞いておかないと入社後トラブルやミスマッチにつながる事項もあります。
各医院におかれては、本人に責任のない事柄や本来自由であるべきものを採用条件とすることは、応募者の基本的人権を侵害するということを理解していただき、差別のない公正な採用選考の実施をお願いします。
自医院の面接・採用の進め方に不安がある場合は、弊社がアドバイスをいたします。
採用代行サービスでは、採用面接の注意点や効果の出る採用面接の方法などもアドバイスしていますので、うまくいく面接で不安を抱えている場合には、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
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