歯科衛生士の離職率が高い理由とは?定着率を高めるためには採用から見直すべき!
2023.03.01歯科衛生士は、離職率が高い傾向にある職業の1つです。
雇用する側としてはすぐに辞められてしまってはコストが余計にかかってしまいますから、なるべく定着率を高くしたいと考えるのは自然な考えでしょう。
歯科衛生士の定着率を上げるためには、離職率が高い理由を知って対策する必要があります。
原因と対策をしっかり把握して、歯科衛生士の離職率を下げられるように改善していきましょう。
歯科衛生士の離職率は?
歯科衛生士の勤務実態調査報告書によれば、歯科衛生士のうちの約40%は現在の職場での勤務年数が5年未満と回答しています。つまり、4割もの歯科衛生士が5年以内に離職してしまっているわけです。
10年未満で見ると実に6割弱が離職しているので、歯科衛生士の離職率はかなり高い方だといえるでしょう。
これはさまざまな職場に対してのアンケート結果ですが、診療所や病院・大学病院に絞ったデータでも同じような数値が出ています。
基本的に離職率が高い業界なので、何らかの対策をしなければ定着率を上げることは難しいというのが現実です。
歯科衛生士の離職率はなぜ高いのか
上記でご紹介したように、アンケートの結果から歯科衛生士の離職率はとても高いということが分かりました。
なぜこれほどまでに歯科衛生士の定着率が低いのか、その理由を知らなければ、解決して定着率を上げるのは難しいです。
もちろん歯科衛生士がすぐに離職してしまう要因は1つではないため、ケースバイケースで対応していく必要はありますが、多くのケースに当てはまる原因をいくつかご紹介します。
全ての問題を解消することは難しいかもしれませんが、可能な範囲で改善していくことで離職率の改善につながるでしょう。
ライフスタイルの変化
歯科衛生士として働いている方の99%は女性となっており、非常に女性の比率が高い業界であることがわかります。
そして、男性と比較すると女性は結婚や出産によってライフスタイルが変化することが多いのも事実です。
勤務先が変わった人の勤務先変更理由を見ると、結婚が29.3%、出産・育児が28.7%となっています。
また、これらの理由で非常勤の方が勤務先変更となる割合が高いという特徴もあります。
このように、ライフスタイルの変化によって歯科衛生士の定着率が低くなるのは避けられない事実です。
人間関係の不満やトラブル
歯科衛生士の離職率が高い原因には、人間関係のトラブルも少なくありません。
勤務先変更理由に、院長との人間関係が問題だったとの回答は29%にものぼります。
パワハラやセクハラをはじめとしたトラブルによって、離職していく割合が結婚や出産・育児と同程度というのは由々しき問題です。
また、院長がスタッフのマネジメントを怠った結果、スタッフ同士が派閥を作って争うというケースは少なくありません。
同僚や先輩後輩間での人間関係トラブルを含めると、非常に多くの歯科衛生士が不満に思っているということをアンケートから読み取ることができます。
給与や待遇の不満
これも歯科衛生士に限らない理由の1つですが、給与や待遇への不満も離職率を高めている一因です。実際の勤務先変更理由に、給与や待遇を挙げている人が22.3%存在していることからもわかります。
また、勤務先に改善してほしいことの項目では実に72.5%が待遇改善を挙げています。
実際に待遇を理由に離職している割合はそこまで多くはありませんが、待遇改善してほしいと考えている歯科衛生士はとても多いです。
給与についても、現在の年収に満足またはある程度満足している人の割合は39.7%と実に4割弱となっています。
仕事内容の不満
歯科衛生士は、仕事内容に不満を持っている方も多いようです。勤務先変更理由の仕事内容を挙げた割合は22%となっており、無視できるほど少ないわけではありません。
なかには仕事のスキルアップを目的とした前向きな離職もありますが、仕事内容に不満を持っているケースの方が圧倒的に多いです。
歯科衛生士が対応できる業務範囲は、あらかじめ法律によって定められていますが、歯科衛生士の仕事範囲外のことを指示するという問題もあるようです。たとえば、歯科衛生士に咬合採得や義歯の調整をさせるといった行為は違法ですが、これを指示するというケースもあるようです。医院長に指示されてしまうと断りにくいですし、最悪の場合歯科衛生士法に違反した罪で罰せられることになります。
違法行為を指示されてしまえば、歯科衛生士が離職してしまうのは当然といえるでしょう。
歯科衛生士の採用にお困りの方は、こちらの記事もご覧ください。
なぜ歯科衛生士が集まらない?お金をかけずに採用難から抜け出す方法
歯科衛生士は働く上で何を重視するのか
一般的な企業では、労働者が働く上で重視しているのは、自身のスキルアップややりがい等が挙げられます。
もちろん歯科衛生士も同様にそれらを重視している人は居ますが、全体の傾向としては少し異なるようです。
歯科衛生士は、すでにお伝えしている通り非常に女性が多い職場であること、さらに国家資格が必要な職業といった理由から、何を重視しているのかを読み取る必要があります。
ここからは、歯科衛生士が重視する3つのポイントについて詳しく見ていきましょう。
1.働きやすさ
2.生活との両立のしやすさ
3.資格や技術を活かせるか
歯科衛生士が重視している部分を充実させることで、離職率を下げることにつながります。
1.働きやすさ
上記でもご紹介してきましたが、勤務先変更の理由にほとんどの人が挙げているのが人間関係のトラブル。
その一方で、勤務先変更の理由に給与が不満だとしている割合は非常に少ないです。
アンケート結果を見ると、給与面に不満を持っている割合は多いのですが、それを理由として勤務先を変更している歯科衛生士は少ないという意外な結果になっています。
これらのことから、歯科衛生士は給与面に不満を持っていたとしても、人間関係のトラブルがなくて働きやすい職場を求めている割合が多いことがわかります。
歯科衛生士の給与設定についてお悩みの方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
【2022年版】歯科衛生士が採用できない1番の理由【給料・給与の話】
2.生活との両立のしやすさ
歯科衛生士のほとんどは女性で、結婚や出産・育児によってライフスタイルの変化が起きやすい業界になっています。
結婚のケースはともかくとして、出産や育児になると、生活と歯科衛生士の両立は非常に難しくなります。
そのため出産した後は一度離職してしまうというケースが非常に多いのですが、その後に非常勤として復職するといった流れも少なくありません。
一方で、復職する際に育児の預け先が見つからないなどの障害があることも見えてきました。つまり生活と歯科衛生士を両立できれば、実は働きたいという人が多いのです。
3.資格や技術を活かせるか
歯科衛生士の魅力をアンケートすると「国家資格である」「専門性の高い仕事である」といった回答が非常に多いのが印象的です。
歯科衛生士の多くは、資格や専門的な技術を誇りに思っていることがアンケート結果からわかります。
そして、「現在の職場に対して専門性や資格などの評価を改善してほしい」との回答は61.3%です。このように、非常に多くの人が正しく評価されていないと感じているわけです。
資格や技術を評価してもらえて活かすことができるかどうか、これは歯科衛生士の離職率を低下させるために重要な要因の1つといえます。
歯科衛生士の定着率を高める5つのポイント
歯科衛生士がどんな職場を魅力的だと感じるのか、アンケート結果から考えてみると、一般企業とは大きく異なっていることがわかりました。
基本的には給与面ではなく、人間関係やライフスタイルなどの問題で歯科衛生士の定着率は低くなっています。
また、資格や専門性がしっかりと評価されることも重要なので、評価はもちろんとして、専門性を高めるための体制も必要でしょう。
これらを踏まえて、歯科衛生士の定着率を高める5つのポイントをご紹介します。
制度や待遇の改善
歯科衛生士の離職率の高さは、ライフスタイルの変化、特に出産が影響しています。
特に産休などは現状でも7割近くがあるとしていますが、産休などの制度が充実していない場合は、真っ先に改善するべきポイントでしょう。
また、産休があっても育休がないというケースもあるようで、育休がなければ離職せざるをえないことが多いのも事実。
これらの産休・育休制度の改善に加えて、ベースアップといった給与面の待遇改善を合わせることで、離職せずに定着してくれる歯科衛生士の割合は格段に増えるはずです。
女性が働きやすい環境を作る
産休・育休と被る部分がありますが、歯科衛生士の99%は女性なので、女性が働きやすい環境を整える事は非常に重要です。
一度離職してブランクがある人でも、資格があるため再就職はしやすい業界ですが、それとは別に働きやすい環境を用意しておくと良いでしょう。
たとえば、子育てと両立しやすい休みや勤務時間を設定することで、育休開けやブランク開けの母親でも働きやすくなります。
復職後は非常勤としてしばらく働いて、生活が安定してから常勤になるといった臨機応変な対応もできると更に働きやすい環境になるでしょう。
研修などの教育体制を整える
歯科衛生士の多くは、その専門性や資格に誇りを持って働いています。
その上で、アンケートでは職場にスキルアップの機会を作ってほしいと半数以上の人が答えていました。
実際に、研修などの教育体制が十分なされているケースはまだまだ少ないです。逆にいえば、スキルアップできる体制を整えれば非常に魅力のある職場にすることができるでしょう。
他よりも魅力のある職場にすることができれば、歯科衛生士の定着率が高まることはいうまでもありません。
スキルアップだけでなく、ブランクのある人が再就職する際の研修なども体制が用意できていると尚良いでしょう。
仕事の成果を評価する
歯科衛生士の仕事をしっかりと評価することも大切です。
国家資格を持って専門的な仕事をしているわけですから、それが評価されなければモチベーションは下がる一方。
金銭的な問題が直接的な職場変更理由になっているケースは少ないですが、やはり仕事の成果を評価するには、働きに見合った賃金を支払うのが最も効果的でしょう。
現在の給与に満足していない歯科衛生士はとても多いので、働きに見合った報酬をしっかりと支払うだけでも、モチベーションの維持には十分すぎるほど効果があるはずです。
仕事の評価は、他の改善案と同時に行うとより効果が高くなります。
スタッフとコミュニケーションをとる
歯科衛生士が職場を変えたり、退職してしまったりする理由の多くは人間関係です。
職場の人間関係を円滑にするためには、スタッフとしっかりとコミュニケーションをとる必要があります。
そのためには、定期的にコミュニケーションをとる時間を設定しておくのも有効です。
また、上記でご紹介した他の案と合わせて、定期的に勉強会を開くといった方法でコミュニケーションの機会を増やすのもおすすめです。
スタッフ間でも円滑にコミュニケーションが取れて、助け合いができる環境になれば、離職の原因はかなり減るでしょう。
定着率を高めるためには採用から見直そう
そもそも、歯科衛生士の離職率を下げて定着率を高めるためには、採用から見直す必要もあります。もちろん院側で改善できる部分は改善する必要がありますが、求める人材とマッチしていない可能性や、採用したスタッフ側に問題があるケースもあるでしょう。
より優秀でより長期的に働いてくれる歯科衛生士を採用することができれば、その時点で定着率を高めることに成功したともいえます。
そういった人材にしっかりと自院をアプローチするために、必要なポイントをいくつか見ていきましょう。
自院の弱みを分析する
まずは、求めている歯科衛生士を獲得するために、自院の弱みを分析することから始める必要があります。
ここまで歯科衛生士が職場を変えるに至った理由や職場に求める要素をご紹介してきましたが、自院の弱みを知らなければどこを改善したらいいのかも不明瞭なままです。
データと比べて自院はどういった部分が足りていないのかを把握して、悪いところは改善し、それ以上にメリットとなる部分を打ち出してアピールする必要があります。
歯科衛生士の有効求人倍率は非常に高く、どこの院も求めている状態なので自院の弱みを分析して改善していかなければ、良い人材を採用するのは難しいといわざるを得ません。
競合医院の採用条件を把握する
歯科衛生士の有効求人倍率は、一般の職の2倍にもなります。
良い人材は当然良い条件の医院に流れてしまうため、採用する際には競合となる医院の最強条件を把握する必要があるでしょう。
少なくとも競合と同等の条件でなければ、基本的に望んでいる人材を獲得することはできません。
たとえば、給与面で負けていたとしても制度の面で選んでもらえる可能性はあります。
まずは競合の採用条件を知らなければ比較をすることすらできませんから、競合の把握は最優先事項です。競合の情報を調べた上で、自院の方が条件が良ければ問題ありません。
もし条件で負けているのであれば、採用条件の見直しを行うべきです。
スタッフとの定期面談
スタッフとの定期面談は非常に重要な要因の1つです。
人間関係の問題で離職率が高くなっている医院は多いですが、その原因はコミュニケーション不足であることがほとんどです。
院長がスタッフとコミュニケーションを取らないケースは非常に多く、そのため定着率が非常に低い業界に拍車をかけています。
一方で、歯科衛生士としては人間関係のトラブルが少ない職場は魅力的に見えます。スタッフとの定期面談は、既に働いているスタッフの関係を円滑にする役割もありますし、トラブルのない良い職場環境を作ることができれば、優秀な歯科衛生士を新規で雇いやすくなる効果もあるでしょう。
院長がスタッフのことをしっかりと見て話を聞くということは、想像以上に大切な役割を持っています。
自院の魅力を伝える
求人を出す際には、自院の魅力をしっかりと伝えることが大切です。
歯科衛生士は売り手市場のため、自院を選んでもらうための魅力が必要になります。
特に歯科衛生士が辞めたくなってしまう理由をカバーできる魅力をうまく伝えることができれば、長期的に働いてくれる人材を獲得することにつながるでしょう。
魅力がないのであれば魅力を作るところから始める必要がありますが、既に魅力があるにも関わらず求人の際に上手くアピールできていないケースは非常にもったいないです。
たとえば、給与は競合の医院と同等程度でも、さまざまな制度が充実している場合は、上手くアピールすることで人気の医院になれる可能性は十分にあります。
歯科衛生士の定着率を高めるためにも、自院の魅力を積極的に伝えられるように準備すべきです。
求人媒体を活用する
歯科衛生士は完全に売り手市場となっているので、歯科衛生士を求めるなら求人媒体をうまく活用することは必須です。
もちろん全ての人材を求人媒体経由で採用する必要はありませんが、医院側は歯科衛生士に選んでもらう立場ですから、適切な場所へ求人情報の露出をしなければ競合の医院に人材を持っていかれてしまいます。
求人媒体にはクリック課金式のものやリスティング型広告など、さまざまな特徴があります。求人媒体を利用するのに掲載料などがかかる場合は、無制限に利用することは難しいかもしれませんし、忙しくて採用にかける時間がない場合もあるでしょう。
しかし、デンタルHR総研では初期費用や月額費用が0円で採用を代行し、人材を採用するまでは費用が一切かかりません。
採用につながる求人条件の設定やこれまで700件以上の採用を獲得したノウハウを元に、応募が来る求人原稿をデンタルHR総研が作成いたします。
ノーリスクで始められるデンタルHR総研のようなサービスであれば、今まで求人媒体を使ってこなかった医院や、求人媒体を使ってもなかなか成果が出せなかった医院でも、効率的に導入できます。
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求人媒体の運用やスカウトメールなど、採用にまつわる部分を全て行うため、医院長は診療に専念できるでしょう。
定着率を高めるための施策がきちんと行えているのであれば、非常に魅力的な医院であるということをデンタルHR総研を利用することで余すことなく伝える事ができます。
これらの採用業務を全て自分で行うのは負担が大きいので、歯科衛生士の採用にお困りの方は、ぜひご利用ください。
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まとめ
歯科衛生士は女性が非常に多く、国家資格が必要な仕事という背景から、離職率が高い業界です。
しかし、離職率の高さの原因をしっかりと把握して改善をすることで、長期的に働ける医院を作ることで定着率をあげることができます。
この記事を参考に、歯科衛生士の働きやすい環境を作り、離職率の低い職場にしていきましょう。魅力的な医院にすることができれば、デンタルHR総研を活用することで、さらに医院の良さをアピールできます。
この記事を書いた人
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