歯科衛生士が不足している理由や定着率を上げるポイントを解説
2024.05.28
歯科医療の現場で、歯科衛生士の確保が大きな課題となっています。現在の歯科衛生士不足が、単なる人員不足ではなく、医療の質や患者満足度を低下させる深刻な問題であることを認識する必要があります。歯科医院として、歯科衛生士の定着率を上げるにはどうすればいいのでしょうか。今回は、歯科衛生士が不足している理由と定着率を上げるポイントを解説します。
歯科衛生士が不足している理由
歯科医療の現場で、歯科衛生士不足の深刻さに直面している方も多いのではないでしょうか。以下では、歯科衛生士不足の背景にある要因を分析し、その原因と対策について解説していきます。
国家資格のハードルが高いため
歯科衛生士になるためには、国家資格の取得が必須です。受験するためには3年制の専門学校か短大、または4年制大学を卒業する必要があり、誰でも受験できるわけではありません。歯科衛生士国家試験は、年に1回実施されており、合格基準は正答率60%とされています。合格率は約95%と、他の医療系の国家試験と比べ高い合格水準です。
しかし、一定の学歴要件と国家試験を経る必要があるため、歯科衛生士を志す人材にとってハードルが高いことは事実です。また、国家資格取得に複数年の準備期間を要するため、即戦力となる歯科衛生士の確保が難しい状況にあります。
このような国家資格取得の難しさから、歯科衛生士を志す人材が減少してしまい、結果として歯科衛生士が不足する一因となっています。
歯科クリニックの増加に追いつかないため
歯科衛生士不足の主な理由の一つに、歯科クリニック数の増加に歯科衛生士の供給が追いついていないことがあげられます。近年、歯科口腔ケアの重要性が高まり、歯科クリニックの数は増加傾向です。しかし、歯科衛生士の数は歯科クリニックの増加ペースに追いついていません。
令和2年度では、歯科衛生士免許登録者数298,644人のうち、業務従事者数は142,760人(※)という結果が出ており、約半数が資格を有していても就業していないことになります。歯科衛生士の資格を取得しても、出産や育児などで退職し、復職していない人が多くいるため、各歯科医院の人手不足がより深刻になっています。
(※)出典:就業歯科衛生士について|厚生労働省
歯科衛生士の離職率が高いため
歯科衛生士は離職率の高い職種の一つとされています。離職理由はさまざまあるため、状況により対応していく必要はありますが、離職する主な原因は以下の通りです。
原因 |
理由 |
ライフスタイルの変化 |
歯科衛生士は大半が女性であり、結婚や出産により生活が変化するため |
労働時間の不自由さ |
ワークライフバランスを重視する歯科衛生士が多いため |
休みの取りにくさ |
有給が取りやすい環境ではないなど |
仕事内容の不満 |
仕事範囲外のことを指示されるなど |
キャリアアップの 機会の少なさ |
歯科衛生士は診療補助がメインとなり、将来的なキャリアアップの道が見えにくいため |
給与の低さ |
より高い給与を得られる職場へ転職するため |
このように、労働環境や経済面・キャリア形成の問題から、歯科衛生士の転職率が高い状況にあります。
歯科衛生士の離職率についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
「歯科衛生士の離職率が高い理由とは?定着率を高めるためには採用から見直すべき!」
参加を検討されている方は、ぜひこの記事で紹介したポイントを参考に、有意義な時間を過ごしてください。
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歯科衛生士の定着率を上げるポイント
先述したように、歯科衛生士は休みの取りにくさやライフスタイルの変化などから、離職率が高いことが現状です。優秀な歯科衛生士を定着させるには、労働環境の改善が不可欠です。歯科衛生士の皆さんがやりがいを持ちながら、健康でいきいきと働き続けられるよう、以下で定着率を上げる具体的なポイントをお伝えします。
長く働きたいと思える環境を整える
歯科衛生士が長く勤務し続けられる環境を整備することが重要です。具体的には以下のような点に配慮する必要があります。
ポイント |
内容 |
ワークライフバランスの実現 |
有給休暇取得の促進・所定労働時間の遵守・育児休暇制度の拡充など |
キャリアアップの機会の提供 |
スキルアップのための研修・資格取得支援制度の導入 |
処遇の見直し |
昇格や昇給による待遇改善など |
このように、歯科衛生士が長期的なキャリア形成を描けるよう、処遇や職場環境の整備に取り組むことが不可欠です。特に歯科衛生士は女性が多いこともあり、結婚・出産による退職者のフォローアップなどライフイベントに備えられるような体制を整えることも重要です。
長く勤務できるような取り組みを徹底し、定期的に見直しを行うことで、さらなる定着率の向上が期待できます。
働きを正当に評価する仕組みを整える
歯科衛生士は国家資格を持つ専門職であり、自分の仕事に誇りと責任感を持っている人が多い傾向があります。そのため、自分の働きを正当に評価し、給与や待遇などに適切に反映させる仕組みが整備されている職場であれば、高いモチベーションを持って長く働き続けてもらえるでしょう。
具体的には、経験年数だけでなく、スキルや業務実績に応じた給与体系の導入や目標達成度に基づいた業績評価制度の導入などが考えられます。さらに、将来的なキャリアアップの道筋を明確化し、長期的な視点でモチベーションを維持できるようにすることも重要です。
このように、自分の働きが正当に評価されていると実感できる環境づくりが、歯科衛生士を長く雇用し続けるためのポイントとなります。
スタッフ間でコミュニケーションを取る
コミュニケーションの活性化は、歯科衛生士の定着率を高める大切なポイントです。良好なコミュニケーションが取れる環境では、以下のようなメリットが期待できます。
- 歯科衛生士同士の協力体制が築ける
- 上司や先輩から適切な指導を受けられる
- 職場の人間関係がスムーズになる
具体的には、以下のような取り組みが有効でしょう。
取り組み |
内容 |
朝のミーティング |
1日の業務内容を共有する |
終業後のミーティング |
1日の振り返りと改善点を共有する |
定期的な面談 |
上司と部下が悩みを相談し合う |
研修会の開催 |
最新の知識や技術を学び合う |
このように、日々のコミュニケーションを大切にすることで、歯科衛生士同士の絆が深まり、働きがいのある職場環境が整えられます。結果として、優秀な歯科衛生士の定着率向上につながるでしょう。
教育体制を整える
歯科衛生士の定着率を上げるためには、教育体制を整えることが重要です。特に、新人歯科衛生士には、業務の基本から丁寧にOJT(On-the-Job Training)を行い、スムーズに業務に馴染めるよう配慮しましょう。丁寧な指導とフォローアップにより、新人歯科衛生士は自身のスキルに自信と誇りを持つことができます。
一方で、中堅・ベテランの歯科衛生士には、外部の講習会の受講を支援したり、最新の知識や技術を学ぶ機会を設けたりすることが重要です。学ぶ機会を設けることで、歯科衛生士の成長意欲を向上させることができるでしょう。さらに、先輩が後輩に対してマンツーマンで指導を行う体制を整備すると、歯科医院内での役割分担や連携がスムーズになります。
成長意欲を高める環境を整えることで、歯科衛生士の定着率の向上が期待できます。
院内の業務効率化を高める
歯科衛生士の定着率を上げるためには、業務の効率化が重要です。業務が非効率的で負担が大きいと、離職につながる恐れがあります。院内の業務効率化を高めるためのポイントとして、以下のことがあげられます。
- 歯科衛生士のスキルや経験に合わせた適切な業務を分担する
- 業務内容を分析し、非効率な作業や偏った業務分担がないか点検する
- マニュアルを作成し、業務を標準化することで無駄な作業を減らす
- 清掃や器具の準備などの補助業務を歯科助手に任せる
- 電子カルテシステムなどの導入により業務の効率化を図る
- 業務フローの見直しを行い、重複作業を排除する
このように、無駄を省いた適切な業務分担と標準化を行うことで、個人の生産性を高めることができます。結果的に、歯科衛生士の負担を軽減し、やりがいを持って働ける環境が整うでしょう。
歯科衛生士の不足でよくある質問
歯科衛生士不足の影響は、単に患者様の予約待ちが長くなるだけでなく、適切なケアが行き届かなくなる恐れがあります。最後に、歯科衛生士の不足でよくある質問をご紹介します。
歯科衛生士の求人倍率の推移は?
歯科衛生士の需要は年々高まっており、新卒求人倍率は上昇傾向にあります。2023年の歯科衛生士の求人倍率は23.3倍(※)でした。一般社団法人全国求人情報協会が発表した新卒求人倍率の推移は以下の通りです。
出典:歯科衛生士の求人倍率、新卒 2023年は過去最高|グッピー
このように、新卒求人倍率の推移を見ると、近年は20倍を超える高い水準が続いています。しかし、新卒の求人数は増えているものの、歯科衛生士の数が追いついていない状況です。先述したように、歯科衛生士を必要とする歯科医院の増加により需要が増えていく一方なため、相対的に人手不足となっています。この傾向は当分続くと予想されるので、歯科医院では歯科衛生士の確保と定着に向けた取り組みが欠かせません。
(※)出典:歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告|全国歯科衛生士教育協議会
歯科衛生士の採用は難しい?
歯科衛生士の求人倍率は年々上昇しているため、求職者が就職しやすくなっている一方で、採用しても歯科衛生士の定着が難しい状況が続いており、採用活動は容易ではありません。歯科衛生士の勤務実態調査によると4人のうち3人は転職を経験しているようです。歯科衛生士の採用が難しい理由は以下のようなことがあげられます。
- 他医院との差別化が難しい
- 採用媒体を活用できていない
近年、歯科医院の数は増えており、コンビニの数よりも多いと言われているため、求職者を採用しても他に良い条件がある歯科医院があれば、短期間で転職する可能性があります。先述した歯科衛生士の定着率を上げるポイントを考慮した他医院との差別化を図るための対策が重要です。また、数ある歯科医院の中から自院を選んでもらうには、求人情報で自院ならではの働きやすさや魅力などをアピールする必要があります。有効的な採用媒体を上手く活用することで、手間やコストを省ける可能性もあるでしょう。
歯科衛生士の雇用・採用の難しさについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
「歯科衛生士の雇用・採用はなぜ難しい?理由を知って採用を成功させよう」
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まとめ
今回は 歯科衛生士が不足している理由と定着率を上げるポイントを解説しました。歯科衛生士が不足している理由は、歯科クリニックの増加や国家資格取得のハードル・転職率の高さなど複数の要因が重なっています。一方で、歯科衛生士の定着率を上げるには、以下のような取り組みが重要です。
- 長期就労を可能にする環境整備
- 適正な評価制度の導入
- スタッフ間のコミュニケーション促進
- 教育体制の強化
- 業務の効率化推進
このように、労働環境の改善と人材育成の両面からアプローチすることで、歯科衛生士の定着率向上が期待できます。歯科医療の質を維持するための重要な課題と言えるでしょう。デンタルHR総研は、採用代行という側面から貴医院のお悩みの解決にご助力いたします。
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この記事を書いた人
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